群馬県信用保証協会

風呂川

折々の散歩道

水と花と生活の匂いのする道

前橋市

風呂川のスケッチ

民家の間を流れる風呂川

 「水と緑と詩の街」というキャッチフレーズどおり、前橋市には利根川や広瀬川をはじめ、たくさんの川が縦横に流れています。特に敷島公園から前橋公園の周辺にかけては、川や池などの水と緑が都市・居住空間の中に美しく調和し、四季折々、多くの人で賑っています。今回は、余り知られていない、風呂川に沿って歩く道を紹介しましょう。

  敷島公園には駐車場が点在しているので、適当なところに駐車をして、歩き始めます。風呂川は、前橋市水道局敷島浄水場の水道タンクの南側にある、群馬県企業局小出発電所から、広瀬川を分水する形で源を発しています。敷島公園臨時駐車場から覗き込むと、水が勢いよく流れ出している幅1メートルほどの水路を見ることができます。

 そもそも現在の広瀬川の川道には、かつて利根川が流れていて、利根川が16世紀に現在の流路に変わった際に残された川道を整備し、広瀬川が生まれました。風呂川は、それから間もなくして、前橋城のために広瀬川から分水して作られたもので、井戸水の欠乏や、籠城・渇水の用意、堀の水などに利用しました。「風呂川」という個性的な名前は、城内の内情を知られないようにつけられたそうですが、現在の感覚からすれば、これもまた充分にあやしいネーミングです。ともあれ、さりげない川なのですが、意外なほど古い歴史を有しているのです。

  しばらくは、川に隣接する道はないのですが、川を横断する道路が何本か走っていて、民家の間を抜けて流れる川の様子を眺めることができます。隣接する民家の庭木が左右から川面を覆い、緑陰を吹きすぎる川風が、水と花の匂いを運んできます。日暮れ時にはきっと夕餉の匂いも漂ってくることでしょう。どこか懐かしさを感じさせる風景に、随分長いこと見入ってしまいました。

 主要地方道前橋・箕郷線を越えると、川に沿って道が続きます。車の通れない細い道で、川の反対側には民家が迫り、ここでも、川が生活に溶け込んでいる様子を見ることができます。コンクリート護岸されていた川は、この辺りになると石積みの箇所が現れます。掘削当初は粘土で固められていて、流れが速く粘土で滑るため「人とり川」とも呼ばれていたそうです。現在も流れが速く、水量も多いので、小さいながらもなかなかあなどれない川です。

 やがて、奇妙な風景に出会いました。道の上に小さな水路が流れ、遊具が設置され、藤棚が作られ、ベンチが設えてあります。「道の横」ならば分かりますが、道そのものが公園になっているのです。珍しい風景を写真に収めていると、老人が歩いてきたので、怪しまれないように「道が公園になっているなんて珍しいですね」と言い訳するように話しかけました。90歳近いと思われる老人は、この道は昔川だったところを埋め立て作ったものであることを教えてくれました。後ほど地図で確認したところ、「くるみ子供公園」と名づけられていました。

  川から少し離れながら、路地風の狭い道をしばらく進むと、大きな神社が現れました。観民稲荷神社と名づけられたこの神社は、前橋城初代藩主酒井重忠が、風呂川改修にあたり守護神として祀ったもので、広い境内には、市の保存樹木に指定されているイチョウやスギ、クロマツなどの巨木がそびえ、明治44年に当時の吾妻郡岩島村から移築した立派な社殿のほか、弁財天や金比羅宮、秋葉神社、天満宮、水天宮などの社が点在しています。かつては藩主により茶亭「観民亭」が作られたほどの景勝の地で、庶民の遊楽の地としても賑わいを見せていたそうです。弁財天の社は、周囲を大人の背丈ほどに掘り込まれていて、以前は池だったのですが、深くて危険なのと、木々の落葉が多く水が腐るため、もう長いこと水を入れていないそうです。これは、かつて池だった堀の中で落葉を掃いていた老人に教えてもらいました。この神社の氏子だという老人は、神社の由来などについてしばらく熱心に教えてくれました。

観民稲荷神社スケッチ

観民稲荷神社

スケッチ

  この後再び川から離れますが、共愛学園跡地を通り越した辺りから右へと細い道を折れると、再び川に沿った快適な道が続きます。やがて満々と水を湛えた群馬県柳原発電所のダムが忽然と姿を現します。ここで一旦広瀬川と合流したように見えるのですが、すぐに分かれます。旧競輪場を右手に、風呂川を左手に静かな道が続き、途中、風呂川の由来について記された案内板が立っています。やがて臨江閣の北側の見事な松並木の土手が現れ、土手に沿って流れる川は、前橋るなぱあく(中央児童遊園)の北側の土手へと続いていきます。この土手はなかなか気持ちのよい場所で、ベンチに腰掛け、園内で売っているピザやおでんなどをつまんでいると、散歩の疲れも見る間に吹き飛びます。

  風呂川はこの先も馬場川や矢田川に分水しながら南へと続いていますが、ここで折り返し、来た道を戻ることにします。のんびり歩いて往復2時間半のちいさな旅です。

文/企画課 新井 基之
イラスト/ 新井 紀子

●今回ご紹介したコース