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中心市街地(高崎市)

折々の散歩道

高崎市街地建築巡り

高崎市

鎌倉街道武者行列

鎌倉街道武者行列

 美しい景観を作る会の「悪い景観百景」が話題になっていますが、最近になり景観法が施行されるなど、まち並みやまちづくりに対する社会の意識は高まりつつあります。景観について語る場合、表面的な美しさばかりでなく、地域固有の歴史や文化がその土台に息づいているかどうか、ということが重要なポイントになると思いますが、その点、今回訪れた高崎の中心市街地は、歴史や文化を大切にしたまち並みが形成されていて、見応えのある建築も随所にあり、楽しく散策することができました。

 最初に、高崎駅前にあるウエストパーク1000に車を停めて、歩き始めます。この駐車場、2001年の完成当初から、その大きさと異彩を放つデザインで目を引いていましたが、著名な建築家隈研吾の意匠監修によるものです。高崎のシティカラーであるレンガ色をした細長い外装パネルを、変化に富んだ張り合わせ方をすることで、風通しのよい軽やかさと躍動感を生みだしています。内部はオーソドックスで合理的なつくりですが、入口の辺りから見上げた走路のスロープの美しさは特筆すべきものです。

 この日(10月9日)は鎌倉街道武者行列の開催日で、市役所前城址広場で午前11時に出陣式があるので見学に向かいました。途中、昭和初期の駅前旅館の典型的な形式を有する国登録有形文化財、豊田屋旅館本館を眺めてから、シンフォニーロードにある「ハープの泉」の辺りで行列を待ちました。鎌倉街道武者行列は、城南地区の住民が中心となり、城南小学校から市役所まで、鎧兜や袴姿で練り歩きます。大勢の老若男女が参加しており、誰もみな、恥ずかしさと誇らしさの入り混じった顔をしているのが印象的です。しばらく出陣式の様子を眺めてから、高崎公園や頼政神社の辺りをぶらつき、正午になったので、和風ダレのカツ丼が安くておいしいと評判の栄寿亭で腹ごしらえをしました。

 食事を済ませると、再びシンフォニーロードを北に向かって歩きました。シンフォニーロードは、道幅や街路樹などがよく計算されて設計されており、以前から存在した群馬音楽センターと、新しくできた市役所や高崎シティギャラリー等とのバランスも絶妙です。周囲には広場や公園も多く、洗練された美しいまち並みには、通りかかるたびに感心させられます。やがて群馬音楽センターの手前にある群馬シンフォニーホールが見えてきます。レーモンド事務所が設計を手掛け、1991年に完成した建物は、1980年代に流行したポストモダン様式で作られており、群馬音楽センターと比較しながら鑑賞すると面白いでしょう。

群馬音楽センター

群馬音楽センター

 群馬音楽センターは、市役所の展望台から見下ろすと、まるで長袖のワンピースのような個性的な形をしています。高崎駅方向から歩いていくと、まず袖にあたる部分が見えてきますが、白い屋根と赤い壁と青い格子が長屋のように連なっており、更に進むと、胴回りにあたる部分は蛇腹状のギザギザの形態をしていて、ノコギリ屋根の工場を想起させます。裾にあたる部分は建物の正面となり、大きな格子状のガラスは周囲の風景を映しこんで、明るくモダンな印象です。内部に足を運ぶと、設計者であるアントニン・レーモンドについて紹介するギャラリーが設けられているほか、カンディンスキーばりのカラフルな壁画や、階段のデザインなども見所となっています。1961年に完成したこの建物は高崎のみならず群馬の文化を代表するモニュメントといえ、レーモンド、井上房一郎、群馬交響楽団、ドコモモなど、ここでは到底語り切れないほどの物語が詰まっています。

 群馬音楽センターを後にして北へ向かうと、もてなし広場があり、広場の中を歩きながら振り返ると、高層の高崎市役所と群馬音楽センターが仲良く並んでいる様子が眺められます。タイプの違う建築なのですが、不思議なことにうまく調和しています。姉妹都市公園を通り越し更に北に向かい、国道354号を右折してしばらく進むと、柳通りがあるので右折します。昼間の飲み屋街は、前夜の殷賑の名残をかすかに漂わせつつ閑散としていて、道の両側にある柳並木がしっとりとした風情を醸し、居眠りをする猫の姿が似合いそうな路地があります。やがて高崎城の遺構である堀が現れ、深々と水を湛えた堀に沿って道を進むと、シンフォニーロードにぶつかるので、高崎駅方面へ戻り、豊田屋旅館本館の手前を右折して、高崎哲学堂に向かいます。

高崎哲学堂

高崎哲学堂

 井上房一郎の自邸として建てられた高崎哲学堂は、レーモンドが1951年東京に建てた自邸を実測し参考にしており、レーモンドの自邸が現存しないことから、いまや貴重な建物となっています。この建物の保存、公開の経緯については、4、5年前にマスコミを賑わしたので記憶に新しいと思いますが、群馬音楽センター同様、市民の寄付に多くを依っているということは、高崎市の民度の高さを現わしているといえるでしょう。木造平屋建の建物は、華美さはありませんが、洗練された普遍的な美しさを持っていて、庭園もまた、落ち着いた情趣があり見事です。天井が高く自然光が射し込む居間にしばし佇んだり、庭の小径を歩いたりしていると、心が研ぎ澄まされつつ癒されていくのを感じます。

 最後に、高崎哲学堂の隣にある高崎市美術館に向かいます。高崎市建築指導課と群馬県建築設計センターによる設計で、1991年に完成。コンクリート打ち放しのクールな外観をしていますが、よく見ると意外と豊かな表情をしており、中央部のピラミッドはルーブルへのオマージュと思われますが、愛嬌のあるアクセントになっています。

 見所満載の高崎建築散歩。まち並みは、ひとつの大きな建築美術館なのです……。

文/企画課 新井基之
画/新井紀子

●今回ご紹介したコース