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金山周辺の道

折々の散歩道

裏山を下って商店街へ

太田市

旧金山図書館

旧金山図書館

 太田市の北側には標高は低いながらも存在感のある山並みが連なっています。この丘陵は足尾山地から分離したもので、みどり市から桐生市、太田市にかけて、渡良瀬川に沿って広がっていて、八王子丘陵と名づけられています。一番南東に位置しているのが太田市の金山丘陵(223m)で、市街地に隣接していますが、ひとたび足を踏み入れれば、裏山とも里山とも呼ぶことができる、のどかで自然豊かな風景が広がっています。

  三月上旬の快晴の日に散策に出掛けました。太田公民館に隣接する本町駐車場に車を停め、歩き始めます。最初に、太田公民館の敷地内に別館として建っている旧金山図書館を鑑賞します。太田市出身の実業家葉住利蔵氏によって大正11年(1922)に私立図書館として建てられ、その後太田市に寄付され、昭和44年まで市内唯一の公立図書館として活用されていました。木造平屋建てで、外壁は白く塗られ、コバルトグリーンのドアや窓が爽やかなアクセントとなり、屋根には黒い瓦を載せています。和洋折衷の様式と品のいい色彩のバランスからは、日本の建築のひとつの理想形を見る思いがします。

  太田小を回りこむように北側に進むと、住宅地の間からこんもりとした丘が見えてきました。高山公園です。木々の間を走る石段の中ほどに、トレーニングウェアを着た十数人の高校生がたむろしています。私が横を通りかかると、急に石段を走り出し、チワッスと挨拶をしてきます。私も花粉症対策のマスク越しにチワッスと挨拶を返します。どうやら私のことを学校の関係者だと勘違いし、サボっていた練習を慌てて再開したようです。石段を登りきると平らな広い境内には高山神社の本殿があります。高山彦九郎を祀り明治11年(1878)に建てられました。西側につけられた急な坂道を下り、敷地から出て、住宅街の中を北東へ進むと、ほどなく受楽寺が現れます。

 金山周辺のハイキングコースは、大きく分けて東山コース、西山コース、北山コースの三つがありますが、今日は、東山コースを通って金山城址まで行き、西山コースを経て戻ってくることにしました。受楽寺は東山コースの出発点で、ここから未舗装の山道になります。松などの木々に覆われた尾根を行く道は、よく整備されていて、気持ちよく歩くことができます。左手に東山球場を見下ろしながら進むと、やがて親水公園が現れます。公園の最上部には、頂上から流れ出した水が渦巻型に下っていく湧水施設があり、頂上からは桐生市街のまち並みが一望できます。急坂を自転車で何度も昇ったり下ったりしているスポーツウェアの女性を感心して眺めながら小休止をして、万葉の碑の道へと進みます。道沿いには幾つも句碑が立っています。個人的には、自然と感応しながら歩くべき道に、人事を持ち込む句碑のような存在は不要ではないかと思うのですが、結局は足を止めて読んでしまいます。「松は緑いくさ話はもう止そう」「疲れたと言わぬお日様お月様」という句が気に入りました。

 車道を横切り、カラタチ沢に沿って走る道をしばらく進み、沢から離れると、急登が待ち構えていました。風のないぽかぽか陽気で、三月初旬とはいえ汗が噴き出してきます。休み休み登りつめると、広い駐車場に着きました。ここから先は、金山城址の遺構巡りとなります。金山城は、文明元年(1469)、新田一族の岩松家純によって築城され、地形を生かして峰々に砦を擁し、東西南北ともに約2キロにも及ぶ群馬県最大の城域を有していました。城址は現在、石垣を中心に復元整備が進められています。端正に組み上げられた石垣の美しさや、日の池、月の池の神秘的な佇まい、荒ぶる神が具現化したかのような迫力ある大ケヤキ、そして関東平野を一望できるスポットなど、歴史好きならずとも興味をかきたてられることでしょう。

日の池(金山城跡)

日の池(金山城跡)

 下りは、大光院まで続く山道を進みます。金山周辺は松が多いのですが、マツクイ虫被害のため伐採が進み、道端に重ねられている短く切り分けられた松の幹や、まだ新しい切り株を目にするにつけ、心が痛みます。大光院は、徳川家康により慶長18年(1613)に開山し、初代住職として芝増上寺から招かれた呑龍上人が子供たちの教育に力を注いだため「子育て呑龍」の名で知られることとなりました。広い境内と壮大な本堂は由緒を感じさせます。門前には土産物屋がぽつりぽつりと立ち並び、昭和レトロの懐かしい雰囲気を漂わせています。門前商店街を通り過ぎ西へ曲がると、八瀬川にぶつかります。南へと流れ下る川は、水中を鯉が泳ぎ、左右の道路は石畳で、橋の上には東屋が作られているなど、整備が行き届いており、心地好く散策することができます。川岸には見事な桜並木が延々と続き、開花時期には桜まつりが盛大に開催されます。

スバルサブレ

 八瀬川が前橋館林線(県道2号)にぶつかったところを東へ曲がり、少し歩くと金山城址線が現れるので今度は北へ向かいます。新虎菓子店で、子供が喜びそうな、車の形をしたスバルサブレをお土産に買ってから、隣の「やきそばともちゃん」で遅いお昼を食べました。注文したやきそばは、懐かしいオーソドックスな味でした。大型店が商店街に与える影響などについて女主人と雑談していると、医者の帰りだという、手押し車(シルバーカー)を押した常連のおばあちゃんがやきそばを食べにやってきました。クルマ社会と郊外型大型店は時代の流れですが、こんなおばあちゃんのためにも、商店街は元気でなければならない、と強く感じました。

文/企画課 新井基之
画/新井紀子

●今回ご紹介したコース