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沼田中心商店街周辺の道

折々の散歩道

にぎわいと懐かしさが同居するまち

沼田市

沼田公園

沼田公園

 地方都市の駅前風景というのはどこもよく似ており、商業ビルが建ち並び商店街が広がっているのが通常ですが、沼田駅前はいささか異なり、市の規模の割に穏やかなまち並みが広がっています。これは、沼田の中心商店街が、利根川の河岸段丘の上方に築城された沼田城の城下町として、江戸時代から発展してきたのに対し、1924年に開業した沼田駅は、中心商店街から離れた河岸段丘の下方に敷設されたことによるものです。沼田駅と中心商店街の標高差は70メートルほどあるのですが、これだけ高低差があると中心商店街を経由する形で鉄道を敷設するのは難しかったのでしょう。沼田を語るにあたってはこの高低差、つまり「坂」を避けて通るわけにはいきません。今回の散策は、沼田市が作成した「沼田を歩こう」という使い勝手のよいパンフレットを参考に、沼田駅から坂を上り中心商店街を周遊し、坂を下って戻ってくるルートを散策しましょう。

 沼田駅に隣接する駐車場に車を停め、歩き始めます。木造の駅舎は開業当初からの懐かしい佇まいを残しています。駅前をまっすぐに伸びる坂道は滝坂と名づけられていて、大きな商業ビルこそないものの、飲食店や商店がぽつぽつと建ち並んでいます。ノスタルジー漂うのどかで昭和チックな景観は、旅情をかきたててくれ、好ましく感じられます。坂道の勾配が次第にきつくなり、大きく右にカーブしたところに、歩行者専用の階段が現れます。屋根付の広い階段は坂道をショートカットすることができるのですが、その分傾斜も急になります。数十段の階段を抜けるとまた急坂が待ち構えています。すぐ横には川が流れ、対岸は草木が生い茂る崖となり、蝉時雨が晩夏を惜しんでいます。これまで滝坂は車では何度も通ったことがあるものの、歩いて上ったのは初めてだったのですが、ゆっくり歩いて上りきるまで15分程度で、それほど体力的な負担は感じませんでした。むしろ、坂道を上り詰めるというのは達成感がありますし、のどかな周囲の景観は疲れを癒してくれます。通勤通学で毎日使用する人にとっては大変かもしれませんが、個人的にはこの坂道は面白く感じられました。ウォーキングブームやスロートラベルといった切り口で見れば、この坂は魅力的な観光資源として活用できるでしょう。

 坂道を上りきると沼田公園へ歩を進めます。河岸段丘の崖の上にある公園は、かつて地の利を生かして沼田城が築城されていたところで、花々に彩られた園内の至るところに、石垣や土塁、堀跡などが残され、シンボルタワーとして鐘楼櫓が復元されています。公園内には古い建築物を集めた一角もあり、これも見所になっています。国の登録有形文化財である旧土岐邸洋館は、明治維新前まで127年にわたり沼田城主を務めた土岐氏が転居した東京で居住していた邸宅を移築したもので、1924年に建てられたドイツの郊外別荘風の造りはモダンです。また、国指定重要文化財の旧生方家住宅は、中心商店街で代々薬種商を営んでいた建物を移築したもので、江戸時代の商家建築の粋と商人たちの暮らしぶりを知ることができます。隣接する生方記念資料館は、旧生方家住宅のかつての所有者であり、沼田町長や国家公安委員を歴任した生方誠氏の収集資料を展示しています。また、余り知られていませんが、その北側には、1912年築の体育館や1956年築の武道場が現役で活躍しており、近くの住宅街の一角には、国の登録有形文化財の旧キリスト教会記念会堂もあり、建築好きにとっては充実したスポットになっています。

旧土岐邸洋館

旧土岐邸洋館

 沼田城の大手門跡である沼田小学校の正門を眺めてから、中心商店街へと足を運び、大手前ふれあい広場を経て東の市役所方面へと向かいます。道の左右には典型的な地方の商店街が広がっていますが、城下町からの永い歴史を有することもあり、ところどころに古くて風情のある建物が現れます。中でも「利根農林同窓会館」は味わいのある外観をしています。県指定重要文化財の旧沼田貯蓄銀行の建物は、残念ながら全面シートに覆われていました。利根中央病院の手前を南に折れ、沼田高校の前の道を西へと向かいます。天狗プラザには、沼田まつりの際に担がれる長さ4.3メートルもの大天狗面が展示されています。生方記念文庫は、前述の生方誠氏の夫人であり歌人として全国的に名の知られた生方たつゑ氏の著書をはじめ詩歌等の蔵書を展示しています。建物は、生方家に古くからある土蔵を改装したもので、隣接する大通り沿いの広場は、沼田公園に移築した旧生方家住宅がかつて「かどふじ」の屋号で営業していました。お昼の時間をだいぶ回っていたので、記念文庫のスタッフに手頃な値段でおいしいお店はないか尋ねたところ、隣の広場の一角で営業しているたきもとのだんご汁を勧められました。だんご汁は沼田が市を挙げて推奨している名物のひとつで、市内の多くの飲食店で食べることができます。おっきりこみと似ていますが、キノコや野菜の旨みが汁に濃縮されており、なかなかの滋味です。

 商店街を眺めながらグリーンベル21まで進んでから、今度は裏通りを散策します。北側の裏通りを西から東へと歩き、天狗プラザの辺りから、南側の裏通りを東から西へと歩きます。途中、須賀神社で、県指定天然記念物の大ケヤキを眺めました。中心商店街から沼田駅方面へと下る坂道は幾つかあるのですが、沼田公園の手前を左に折れる、三の丸の堀跡を転用した細い道を行くことにしました。坂を下る途中、沼田駅方面への展望が開け、河岸段丘に密集する家々の様子を一望することができました。道なりに進むと榛名神社が現れるので、参道を南へ下り、沼田駅まで戻りました。

文/企画課 新井基之

●今回ご紹介したコース