群馬県信用保証協会

いずみ緑道と城之内公園周辺の道

折々の散歩道

異国の文化を感じるまち

大泉町

 「ブラジル」という言葉を聞いて思い出すのはどんなことでしょうか。「サッカー」「コーヒー」「サンバ」「リオのカーニバル」「映画『黒いオルフェ』」といったキーワードが脳裏に浮かびますが、「大泉町」もそのひとつ。大泉町の全人口に占める外国人の割合は、日本の市区町村の中でもトップクラスの17.2%(平成20年12月時点)であり、中でも、ブラジルを中心とした南米日系人が多いことで知られています。冒頭に書いたように、ブラジルというと、情熱的なイメージを抱きがちですが、個人的には、「ボサ・ノヴァ」の生まれた国として親しみを感じています。アントニオ・カルロス・ジョビンやジョアン・ジルベルトらによって1950年代後半に生み出されたボサ・ノヴァは、クールで穏やかなリズムとメロディーを持ち、誕生から半世紀以上経つ今もなお、その魅力は色褪せることなく、日本においても若い世代を中心に支持されています。お洒落なカフェや雑貨店などに足を運ぶと(めったに行きませんが……)、流れているBGMの多くがボサ・ノヴァであることからも、人気のほどがうかがえます。おおらかさと繊細さが同居した心地よい音楽を聴いていると、ブラジル人と日本人の感性は、案外似ているのかもしれないな、と思えてきて、親近感が湧いてきます。

 さて、今回は、大泉町を歩くことにしましょう。2月上旬の風の強い快晴の日に出かけました。国道354号を太田市方面から東へ車を走らせると、やがて、道沿いの店舗や事務所の看板に、ポルトガル語が目につくようになり、ブラジリアン・タウン大泉町に到着したことを、実感します。城之内公園の駐車場に車を停め、歩き始めます。城之内公園は、かつての小泉城の跡地を整備して作られたものです。小泉城は、戦国期の延徳元年(1489)富岡氏により築城され、約1世紀後の天正18年(1590)に廃城となりました。散策を始めると、すぐに大きな堀が目に留まります。本丸を取り囲んでいた内堀は、護岸工事がされているものの、往時の姿をよく留めていて、たくさんの水鳥たちが思い思いに泳ぎ回り、堀の縁に沿って植えられた水仙が清楚に咲き誇っています。桜の木も多く植えられており、開花期には桜まつりが催されます。内堀と土塁に囲まれた本丸の跡地は広場となり、この日はゲートボールを楽しむ大勢の人たちで賑わっていました。公園内には、外堀の一部も残されているほか、別の場所から移築された7世紀後半の「城之内古墳」や、土塁周辺に造立されていた85基もの庚申塔を一ヶ所に集めた「城之内の百庚申」などが保存されていて、歴史の息吹を感じとることができます。

城之内公園

城之内公園

 城之内公園を散策していて、気になる建造物が目についたので、訪ねてみることにしました。道を挟んで公園の西側にあるそれは、大泉第一浄水場の配水塔でした。白亜の円筒形をしており、上部がひと回り大きくなっていて、ストライプ状の突起が上から下へ均等に何本も走り、まるで現代美術のオブジェのようなインパクトがあります。群馬県内では、昭和4年に建築された典雅な佇まいの前橋市敷島浄水場配水塔が有名ですが、一概に配水塔といっても、さまざまな形状のものがあることが分かり、興味をかきたてられました。

 西小泉駅は、東武鉄道小泉線の終着駅で、昭和16年12月に開業しました。駅舎も、駅前のロータリーも、のんびりとした雰囲気で、周囲にはポルトガル語の看板を掲げた店が多く目につきます。駅前からは、南へと伸びるいずみ緑道を進みます。いずみ緑道は、城之内公園から利根川堰堤手前の町民野球場まで、約4キロメートルの遊歩道で、「日本のみち100選」「美しい日本の歩きたくなるみち500選」「新日本街路樹100景」に選ばれています。駅に近い辺りは「出会いの広場」「水の広場」「花の広場」として整備された、ゆったりとした空間が広がっています。水路が設けられていますが、冬場だったためか、水は流れていませんでした。その先は、手入れの行き届いた街路樹や植込みが心地よい「緑と彫刻の道」「緑と遊具の道」と続きます。町の中心部に道幅をたっぷり確保した遊歩道が設けられているというのは、とても贅沢なことに思えますが、来歴を辿ると、東武鉄道仙石河岸線に行き着きます。仙石河岸線は、昭和14年に開業した貨物専用線で、昭和51年に廃止されました。いずみ緑道は、この線路の跡地を利用して作られたものです。美しく整備された歩道は快適なのですが、かつて仙石河岸線であったことを偲ばせるものがほとんど残っていないのは寂しく、観光振興の面からも、鉄道遺産の復元が望まれるところです。

いずみ緑道

いずみ緑道

 やがて遊歩道はいずみ総合公園へ至ります。公園内にある町民体育館は、赤いレンガとガラスの取り合わせが美しく、軽やかな佇まいをしています。県道154号の上に架かる瀟洒な歩行者用陸橋を超えると、町民野球場があり、その先には、利根川の堰堤があるのですが、手前の深い溝のところで道が途切れてしまい、堰堤に登って利根川を見ることはできません。

 いずみ緑道を西小泉駅まで戻ってから、今度は国道354号沿いの商店街を東へと進みます。お昼をだいぶ過ぎていたので、ブラジリアンプラザに向かい、2階のハンバーガーショップでホットドック、チーズパンとジュースを注文しました。ブラジリアンプラザには、ブラジル人向けの飲食店や食品・雑貨店、電化製品の店などのほか、ブラジル移民展示コーナーがあります。店舗の移転等で空スペースも目立ちますが、気軽にブラジル情緒を味わうことができます。町内にはほかにも、ブラジル料理店やブラジル産の食品や雑貨を扱う店が多くあるので、異国の文化を味わいに、足を運んでみてはいかがでしょうか。

文/企画課 新井基之

●今回ご紹介したコース