群馬県信用保証協会

鎌田地区・東小川地区の道

折々の散歩道

きれいでおいしい水の満ちるむら

片品村

 出張や会議などで、関東地方以外の人と時折り顔を合わせることがあるのですが、そんなとき、群馬の印象を尋ねるようにしています。その回答は、「温泉が多い」というのがなんといっても圧倒的に多く、温泉地の名前としては草津・伊香保・水上等が挙がります。次いで出てくる答えは、「温泉」に比べるとぐっと少なくなるのですが、「総理大臣」と「尾瀬」。それ以外の答えは、ほぼ皆無といっていい状態です。なお、これは一過性のものかもしれませんが、今年の7月に研修で一緒になった人たちからは、「U字工事の漫才によく群馬が出てきますね」という回答が幾つかありました。ご存知の人も多いと思いますが、U字工事というのは最近テレビ等で活躍している栃木県出身の漫才コンビで、栃木訛りで栃木県のことを自虐的なネタにして笑いを取っているのですが、その際、ライバル視されるのが茨城県や群馬県など。余り好ましい形では引き合いに出されないのですが、決して厭味なものではなく、納得しながらつい笑ってしまいます。群馬の知名度アップに貢献してくれていることに感謝しなければいけません。

 群馬の印象として挙がるキーワードのひとつ、「尾瀬」を擁するのは片品村ですが、今回は、片品村の行政や商業の中心地である鎌田地区を訪ね、周辺を散策することにしましょう。沼田市街地から、国道120号を車で東へ進み、椎坂峠を越えると北へ進路を変えます。片品川に沿うように道は続き、盛夏を迎え緑の色が濃くなった樹々を車窓に見ながら快適なドライブを楽しんでいると、片品村へ入ったあたりで、サルが道を横切っているのを見かけました。車慣れしているのか、焦ることなく、ゆうゆうと歩いています。なかなか粋なお出迎えに嬉しくなったところで、鎌田に着きました。片品村役場の隣にある花の谷公園の駐車場に車を停め、散策を開始します。花の谷公園は、尾瀬の水辺をイメージした尾瀬ガーデン、高原をイメージした丸沼ガーデン、牧場をイメージした武尊ガーデンに大きく分かれ、片品村の自生品種を中心にさまざまな花が植えられています。園内にある水飲み場は「花の谷湧水」と名付けられており、その名のとおりおいしい水が湧き出ています。片品村にはこのような湧水がたくさんあり、「尾瀬の郷片品湧水群」として環境省の「平成の名水百選」に認定されています。また、村の水道水はすべて湧水を使用しているそうで、なんともうらやましい限りです。さっそく湧水で喉を潤してから、120号沿いに広がる商店街へ歩を進めました。残念ながら、空き店舗がちらほらと目につき、他の商店街同様、ここでもモータリゼーションの進展等の問題に直面しているようです。しかし、元気に頑張っている商店や飲食店も多く、近代的な瀟洒な店構えの店舗もあります。梅田屋旅館の前に、江間章子文学碑がありました。かの有名な「夏の思い出」の歌詞が大きな石に刻まれています。江間さんが作詞したこの歌は、戦後間もない昭和24年にNHKラジオで放送され、またたく間に人気を博し、尾瀬の知名度向上に大きな役割を果たしました。美しいメロディと夢のある歌詞とが見事に相乗効果を発揮したこの名曲を教科書で習い、尾瀬が群馬にあることを誇りに思うとともに、尾瀬に行ってみたいという気持ちに駆られたのは、きっと私だけではないでしょう。江間さんはこの歌の功績により、片品村の名誉村民第1号となっています。

鎌田のまち並み

鎌田のまち並み

 商店街の南の外れまで歩き、西方面へ曲がると、日帰り温泉施設である寄居山温泉センターが現れます。その北側には、小高い丘陵の寄居山が公園として整備されており、登ってみると鎌田のまち並みを一望することができます。麓には笠科神社があり、周囲は広場となっています。商店街の裏手にある片品村文化センターや中央公民館の前を通り、商店街の北にある「釜めし竹屋」でお昼を食べました。食事の後は、片品小学校の南から東へと向かう細い道へ歩を進めます。除雪車が2台停まっているのを見つけ、物珍しさからまじまじと観察しました。商店街の東側には、農地の中に住宅や商店が点在しているのですが、残念ながら古い農家建築の住宅はほとんどありません。予備知識もないままに地図を眺め、きっと昔ながらの農村風景が広がっているに違いないと推測していたのですが、この予想は外れてしまいました。細い道を丹念に歩いてみたのですが、お目当ての風景には出会えません。もう少し足を延ばしてみることにし、片品中学校の北の道を東へ進み、東小川地区に入り、大滝川に架かる細い橋を渡ると、古い農家建築が寄り集まっている一角に出会いました。郷愁を誘ってやまない、心なごむ風景に、自分の中の日本人としてのDNAが反応するのを感じます。農家の間の曲がりくねった道を行くと、その先にも立派な農家が現れ、わくわくしてきます。このような景観との出会いこそ、ルーラル・ツーリズムの醍醐味なのですが、まだ充分に情報発信されていないのが実情です。受入態勢等難しい問題もあるでしょうが、観光資源としてもっとアピールしてほしいと思います。

 

尾瀬大橋

尾瀬大橋

 とうもろこし街道として知られる120号を鎌田方面へと向かいます。やがて大きな斜張橋(吊り橋の一種)が見えてきます。1995年に竣工された尾瀬大橋は、2008年竣工の国土交通省関東地方整備局利根川水系砂防事務所片品出張所の瀟洒な建物とともに、モダンで美しい景観を作っています。橋の下には、大滝川が片品川に流れ込む手前で堰き止められた大滝調整池が広がっています。橋を渡りきったところにあるコンビニの先を左に折れ、尾瀬大橋ができる前まで国道401号として使われていた道を通り、花の谷公園まで戻ってきました。最後にもう一度、公園内の花の谷湧水で喉を潤し、散策を終えました。

文/企画課 新井基之

●今回ご紹介したコース