群馬県信用保証協会

広瀬川・桃ノ木川沿いの道

折々の散歩道

水と緑と産業遺産に親しむみち

前橋市

 本連載は平成18年5月にスタートし、今号で50回目を迎えました。「群馬の身近な道を歩くちいさな旅を、一緒に楽しんでいただけたら幸いです」という文章を毎号冒頭に掲げているのですが、連載第1回目は、個人的に身近に接していて、その割に余り知られていない、敷島公園から前橋公園を結ぶ「風呂川沿いの道」を紹介しました。今号は、50回記念というわけではないのですが、ひとつの節目ということで、初心に立ち返り、連載第1回目で紹介した「風呂川沿いの道」と接続している、個人的に気に入っていて、その割に余り知られていないコースを紹介しましょう。

 風呂川は、敷島公園の脇にある群馬県企業局小出発電所から、広瀬川を分岐する形で源を発しています。広瀬川はこの周辺では暗渠となっていて姿が見えません。風呂川、広瀬川とも北から南へと流れており、「風呂川沿いの道」は小出発電所を起点に南へと向かうコースでした。今回散策するのは、起点は同じですが、広瀬川を遡るように、上小出町、荒牧町、関根町、田口町を経ながら北へと向かうコースです。広瀬川というと、何といっても前橋中心商店街近くの「広瀬川詩の道」周辺が有名ですが、前橋北部の流れも変化に富んで、深い味わいがあります。

前橋市浄水場配水塔

前橋市浄水場配水塔

 敷島公園の駐車場に車を停め、歩き始めます。昭和42年に竣工した小出発電所は、周囲から水面が見えないので分かりづらいのですが、北側にそびえるコンクリート壁が印象的です。ちなみに「風呂川沿いの道」で取り上げた群馬県企業局柳原発電所は、広瀬川最下流の発電所で、小出発電所は2番めとなるのですが、広瀬川にはここから上流にかけて小型の水力発電所が短い区間に集中して設置されていて、それを鑑賞するのも楽しみのひとつです。小出発電所のすぐ北には、水道タンクの愛称で親しまれている、前橋市浄水場配水塔の典雅な姿を望むことができます。竣工は昭和4年、高さ37.4メートル、国登録有形文化財で、近代水道百選にも選ばれています。タンクを覆う銅板は豊かなマチエールを持つ緑色で、考えてみれば、緑青(ろくしょう:銅に発生する緑色の錆)は古美術や骨董において鑑賞ポイントのひとつになっているのですから、この塔が典雅な味わいを持つのはもっともなことといえるでしょう。配水塔の手前には前橋市水道資料館があります。配水塔と同じ年に竣工し、永年前橋市浄水場の事務所として使われていました。オレンジの壁と緑の屋根のコントラストがモダンな洋風建築で、こちらも国登録有形文化財となっています。浄水場の北側には、平成6年竣工の新しい事務所がありますが、旧事務所のイメージを取り入れたデザインであるのが好ましく感じられます。

 北に向かい少し進むと暗渠になっていた広瀬川が現れるのですが、高い堤が築かれていて、道路から川面を見ることはできません。雑草が生い茂る堤に沿って歩いていくと、東京電力前橋発電所が現れます。昭和8年に建築された発電所は、小さいながら存在感があり、地面に穿たれた穴の底で水が渦巻き、周囲を固める積石やコンクリートが古色を帯びた様子は、近代産業遺産の風格があります。再び北へ進むと、ようやく川面が見えてきます。川の東側には遊歩道が整備されていて、さまざまな種類の樹木が植えられています。大きな水門が現れたので観察すると、「新桃ノ木用水ゲート」と記されています。広瀬川から分水し近くを流れる桃ノ木川とどうやら地下で繋がっているようです。上毛大橋へ通じる県道161号を渡り、群馬大学荒牧キャンパス正門を左手に見ながら更に北へ向かいます。周囲は閑静な住宅街で、散歩やサイクリングする人と時おりすれ違います。川の側面は積石で固めており、工法からしてだいぶ古い工事と思われ、歴史の重みを感じます。

 やがて、この日みっつめとなる発電所が見えてきます。昭和42年に竣工した群馬県企業局関根発電所で、他のふたつの発電所と違い、上流に満々と水が溜まり、小規模ながらダムとなっています。午前中にも係らず30度を超すような猛暑日だったので、しばらく水の塊を眺めて涼を取りました。明治時代の群馬の絹産業の隆盛を支えた研業社跡地の碑がある片原公園を過ぎ、川の対岸へ渡り、県総合スポーツセンターを左手に見ながら北へと向かいます。周囲には数年前まで静かな農地が広がっていましたが、国道17号前橋渋川バイパスが今年開通したことで、風景が一変しています。バイパスをくぐると、大きな水門が現れ、その先は川沿いに道がないため広瀬川から離れ、東へ向かい、すぐに左折し再び北へ向かいます。広瀬川から分水した川が現れますが、川の真ん中に橋桁を失った橋脚が一本佇んでいて、赤瀬川原平氏の言うところのトマソン物件と化しています。

桃ノ木川遊歩道

桃ノ木川遊歩道

 T字路に突きあたるので右に曲がると、桃ノ木川が現れます。橋の上から眺める桃ノ木川は、初めて見たとき感嘆の声を上げたほど美しく、以前からお気に入りのスポットのひとつです。童謡や昔話の中でしかもはや出会えなくなってしまった、ふる里の小川のような流れがそこにあります。川は緩やかに蛇行し、周囲の草は短く刈り取られ、川に沿うように小径が続いています。桃ノ木川遊歩道と名づけられた300メートルほどの短い道なのですが、一見の価値があります。草の上に座り込んでぼおっとしたり、小川を飛び越えて遊んだり、しばらくのんびりと過ごしました。地元の方々が整備、管理しているようですが、ほたるの里といい、この遊歩道といい、田口町の住民のまちづくりに対する意識の高さには、つくづく感心させられます。この先、再び広瀬川を遡っても、ふたつの発電所など見どころが多いのですが、今回はここで引き返すことにしましょう。来た道を戻ることになりますが、桃ノ木川遊歩道の終点を右に曲がり国道17号へ出て、バスを利用して戻ることもできます。

文/企画課 新井基之

●今回ご紹介したコース