群馬県信用保証協会

前橋中心市街地

折々の散歩道

県都前橋の歴史を辿る

前橋市

 Googleが発表した2010年の道府県別検索急上昇ランキングは、なかなか興味深いものでした。我が群馬県の結果は、3位が「パワースポット」、2位が「コストコ」、1位が「秘境」。ちなみに近県の1位は、埼玉が「停電」、栃木が「栃木ウーヴァ」、茨城が「茨城空港」、新潟が「トミタ博」、長野が「知事選」ですので、群馬の「秘境」がひと際異彩を放っていることがお分かりいただけると思います。インターネットに親しんでいる人ならば承知していることでしょうが、実は群馬県は、このところネットユーザーたちに、日本の秘境としてネタにされ、囃し立てられているのです。昨年の夏には、2ちゃんねるで、都道府県秘境度マップというものが話題となったのですが、群馬、滋賀、佐賀が最も秘境であるSランクとされました。何の信憑性もない地図ではあるのですが、眺めていると思わず笑いがこみあげてきます。ほかにも「群馬 秘境」というワードで検索すると、面白いサイトがぞろぞろ出てきます。群馬県民の中には、群馬は決して秘境ではないと思う人もいるでしょうが、むしろここには、群馬の知名度アップの鍵があるように思われます。「秘境」という言葉の持つプラスとマイナス両方のイメージを意識しつつ、お笑いの要素を取り入れてうまくブランディングしてPRすれば、知名度が上がり、観光面での新しい切り口も見つかるかもしれません。

日本庭園から臨む臨江閣

日本庭園から臨む臨江閣

 さて、今回は、県都前橋の中心市街地を散策することにしましょう。前橋公園の駐車場に車を停め、歩き始めます。前橋公園は、明治38年に開設された市内最初の公園で、平成20年の都市緑化フェアの際、リニューアルされました。新設された日本庭園は起伏に富んだ精妙な造形をしており、高台に聳える臨江閣の典雅な姿を眺めることができます。昔ながらの風情を残すひょうたん池を経て、臨江閣に向かいます。明治17年竣工の本館と明治42年竣工の別館は渡り廊下でつながれ、内部を見学することができます。安中杉並木の巨木も使用されたという建物は木造建築の粋が宿り、細部に至るまで見応えがあります。圧巻なのは、別館2階にある舞台を備えた150畳もの大広間。昭和29年開園のるなぱあく(中央児童公園)は、「日本一懐かしい遊園地」をキャッチフレーズにしています。開園時からあるもくば館は、利用料10円で現在も稼働しているほか、随所に昭和レトロの雰囲気が残り、郷愁を誘います。

広瀬川

広瀬川

 るなぱあくから北東に進み、神明宮に向かいます。社伝によると、文明10年(1478)に太田道灌が上杉顕定と足利成氏との和議を成立させた帰路、この地に宮殿を建て鎮護神としたそうです。前橋城の鬼門除けとして代々崇拝され、現在は、広い敷地に、稲荷神社、菅原神社、厳島神社も建てられています。神明宮の北を流れる広瀬川は、柳橋を起点にして遊歩道「広瀬川詩の道」が整備され、前橋市のキャッチフレーズ「水と緑と詩のまち」を代表する場所となっています。広瀬川詩の道をしばらく進み、国道17号を地下道で潜り抜けた先を、広瀬川から離れ、北へ向かいます。間もなく現れる旧安田銀行担保倉庫は、大正2年(1913)に建築された2階建ての巨大なレンガ倉庫で、往時は生糸等が保管されたそうで、糸のまち前橋の繁栄を今に伝えています。やはり前橋城の鬼門除けとして創建された愛宕神社を眺めてから、再び広瀬川に戻り、広瀬川美術館に立ち寄ります。画家近藤嘉雄氏(1915‐79)の住居兼アトリエとして昭和23年に建てられ、現在は展覧会のほか文化サロンとしての役割も担っています。お昼になったので、弁天通りの角にあるポンチでカレーライスを食べてから、前橋文学館で萩原朔太郎をはじめ前橋で活躍した詩人たちの足跡を辿ります。広瀬川詩の道は、上毛電鉄の中央前橋駅手前にある久留万橋で終わるので、主要地方道4号(前橋赤城線)をJR前橋駅方面へ進み、国道50号を県庁方面へ折れ、元気プラザ21に立ち寄ります。ここは市の複合施設で、中央公民館やこども図書館、シネマまえばしなどのほか、平成24年には市立美術館が開設する予定です。元気プラザ21の南にある八幡宮は、社伝によると、貞観元年(859)創建とも、在原業平の子孫が勧請したともいい、前橋の総鎮守として信仰され、1月9日の初市ではだるまを御神火で燃やしてお祓いします。八幡宮の近くには、明治36年竣工の旧勧業銀行担保倉庫(旧勝山社煉瓦蔵)があり、現在は「のみくい蔵 仁」という居酒屋として利用されています。中央通りは前橋を代表するアーケード街で、郊外型大型商業施設に苦戦しつつも、老舗ばかりでなく新しい店舗も生まれており、健闘しています。残念ながら解体が進む昭和9年築の旧麻屋百貨店を眺め、弁天通りに足を踏み入れると、昭和レトロの色がぐっと濃くなってきます。通りの中ほどにある大蓮寺に立ち寄り、弁天通りを抜けてから、オリオン通りや千代田通りを経て、元気プラザ21方面へと向かい、馬場川通りを進みます。

 国道50号を渡ると、朔太郎通りとなり、大正14年築のテーラーをリニューアルして昨年オープンした本町一丁目カフェが目にとまります。朔太郎通りの名の由来となった萩原朔太郎生家跡の碑の先には、懐かしい佇まいのえびす食堂があります。朔太郎通りから外れ南へ向かうと、大きな双塔を持つゴシック様式の聖堂が見えてきます。昭和7年竣工の前橋カトリック教会で、力強い姿をしています。県庁前通りの日本経済新聞社前橋支局の裏手には、大きな石積みの前橋城車橋門が残されています。県庁を中心としたこの辺りは前橋城址ですが、遺構は余りありません。しかし、県庁の北から西にかけて立派な土塁が残されており、昭和3年築の昭和庁舎、昭和5年築の群馬会館、そして平成11年築の新庁舎らと共に眺めると、歴史の厚みをひしひしと感じます。高浜公園、虎姫観音堂、徳川家康を祀る東照宮を経て前橋公園に戻り、盛りだくさんの散策を終えました。

文/企画課 新井基之

●今回ご紹介したコース