群馬県信用保証協会

中之条中心商店街

折々の散歩道

懐かしいまち並みに現代アートの息吹を感じる

中之条町

 前橋市による美術館が平成24年度にオープンする予定ですが、今年の7月にプレイベントとして開催されたアートスクールBコースに参加しました。「モヤモヤをかたちにする」実践コースと題され、その内容は、案内文によると「地域アートプロジェクトは全国各地でおこなわれています。地域の魅力がアーティストの創造力によって再生する、そんな試みに関心が高まっています。それは政治や経済とは別の手段としての〈街おこし〉なのでしょうか」「前橋の街を一緒に歩き、眺め、語ることでにじみ出てくる活動を試作する実験を行います」というものです。本連載「折々の散歩道」の延長線上にあるような企画に、わくわくしながら受講しました。講師の藤浩志氏は、単なるアーティストの枠を超えて、さまざまな地域で地元の人たちと「地域資源、適正技術、協力関係」を活用した表現活動を行っています。10数名の受講者は、アーティストや美術ファン、学生、商店街の住民など多岐にわたり、藤講師のアドバイスのもと、3日間、街なかを歩き、活発に意見を述べあいました。講義の中で、藤講師が「ものごとの体験は誰と体験するかで変わる」「何を作るかよりも誰と作るかで活動が決まる」と述べたのが深く印象に残っていますが、そう考えると、受講者ひとりひとりとの出会いが、とても大切なものに思えてきます。また、受講者と一緒にスクールにずっと参加していた4人の学芸員の様子からは、「市民と一緒にいい美術館を作ろう」という気概が伝わってきて、とても好ましく感じられました。11月には再び3日間の講義が予定されており、7月に語り合ったことを具体的に実践に移すことになっています。その間、何度かミーティングをすることになっていますので、果たしてどんなものが生まれるのか、とても楽しみに思っています。

  群馬県内には、大きな実績を残している地域アートプロジェクトがあります。今年、第3回を迎えた「中之条ビエンナーレ」がそれです。第1回の平成19年は4.8万人、第2回の平成21年は16万人もの来場者を集め、六合村と合併後初となる今年は来場者30万人を目指しており、全国的にも注目を集めるアートプロジェクトに育っています。今回は、開催に向けて準備が進む(会期:8月20日〜10月2日)中之条町を訪れ、中心商店街を散策することとしましょう。7月下旬の雨交じりの曇天の日に散策に向かいました。「ふるさと交流センターつむじ」に車を停め、歩き始めます。つむじは、平成22年7月にオープンした、洗練されたデザインの瀟洒な建物で、アーティストの作品も扱うショップやカフェ、足湯、イベントスペースなどがあり、中之条ビエンナーレの総合受付会場にもなっています。東に隣接する「歴史と民俗の博物館ミュゼ」は、明治18年に開校した吾妻第三小学校の校舎を利用しており、県指定重要文化財となっています。県道53号(中之条湯河原線)を北に向かうと、眺望のいいテラスが設置された近藤公園があり、県道53号を挟んだ向かい側にある中之条町役場の前の道を東に進み、十字路を左に曲がると、明治18年に創業し、近年営業をやめた旧廣盛酒造が現れます。現在は、建築家松葉邦彦氏により、アートの展示スペースへと改修され、「鳥追い太鼓ギャラリー」も新設されました。松葉氏はこの再生計画により、JCDデザインアワード2011新人賞を受賞しました。国道353号に出て西に進むと、右側の高台に大国魂神社(旧須賀神社)が現れます。江戸時代に中之条で開かれていた市の市神様を祀っており、現在の本殿は19世紀中頃に建造されたものです。

一之宮貫前神社

ふるさと交流センターつむじ

  国道353号を再び西に向かい、Y字路を左の県道58号(中之条東吾妻線)へと進み、古いまち並みを眺めながらしばらく歩くと、左側に、こんもりとした木々の合間から伊勢宮が見えてきます。戦国時代には領主狩野氏の中条城があったとされ、境内は1981.5坪と広く、杉の巨木が何十本も立ち並ぶさまは凛とした力強さがあり、伊勢の森とも呼ばれ信仰を集めています。来た道を少し戻り、枯木沢を越えた先を右に曲がり、静かな住宅街を進みます。しばらく行くと左側に旧白井屋が現れます。現在は会計事務所として利用されていますが、明治10年に開業した木造2階建ての旅館で、昭和54年に廃業しましたが、現在も明治時代の姿をとどめています。稲荷石稲荷神社を眺めてから、国道353号を右に進みます。胡桃沢川を渡ると間もなく、大きなしだれ桜のある南北朝時代創建の林昌寺が左側にあり、隣には、木造の古い建物が味わい深い割烹金幸があります。

富岡市社会教育館

旧白井屋

 国道145号(353号重複区間)を東に進むと、やがてJR吾妻線の中之条駅が現れます。駅前ロータリーの周囲には飲食店が立ち並び、そのうちの一軒、はやしやでお昼を食べました。再び国道145号(353号重複区間)を東に向かうと、昭和レトロの建築が立ち並ぶ商店街が続きます。この道に限らず、中之条町の中心市街地には古い商店建築が多く残されていて、一軒一軒が懐かしくて個性的な店構えをしています。郊外型大型店の攻勢により廃業した店も多いのですが、このまち並みがずっと維持されるといいなあ、と思いながら歩を進めます。伊勢町下の信号を左折し北に向かい、伊勢町の信号を左折し、住宅の建ち並ぶ静かな道を西に向かいます。やがて左側にツインプラザ(吾妻郡図書館・吾妻郡学習センター)が現れるので、その先の五差路を斜め左方向へと進みます。細い道を抜けると国道353号にぶつかるので、右折し、商店街を進むと、破風造りの玄関が印象的な大きな木造建築、町田家住宅が現れます。ここは、代々名主を務めた旧家で、現在の建物は江戸時代末期に建てられたものです。懐かしい佇まいの商店街を眺めながら国道353号を進み、つむじの隣にある古書店唯書館に立ち寄りました。東日本大震災の被災者が避難先である中之条町で永住を決意し、最近開業したばかりの店です。最後に、つむじのカフェでのんびり休憩して、盛りだくさんの散策を終えました。

文/企画課 新井基之

●今回ご紹介したコース