群馬県信用保証協会

渋川中心市街地

折々の散歩道

新しいまち並みと古いまち並みが織りなす道

渋川市

 ここ10数年来、我が国ではアートフェスティバルが年々盛んになっています。2000年に新潟県十日町市、津南町で開催された大地の芸術祭越後妻有トリエンナーレを嚆矢として、この成功を契機に各地で同様のアートフェスティバルが開催されるようになりました。新潟県では今年、第5回の越後妻有トリエンナーレが開催(7月29日‐9月17日)されるとともに、新潟市では第2回となる開港都市にいがた水と土の芸術祭2012が開催(7月14日‐12月24日)されているので、鑑賞に出かけました。越後妻有トリエンナーレには、8人という大所帯で2泊3日で鑑賞し、キナーレやキョロロ、まつだい農舞台といった主要施設のほか、広大な地域に点在する作品を見て回りましたが、ほんの一部しか鑑賞することができませんでした。個々の作品の持つ力に魅了されたのは言うまでもないのですが、普段はひと気のない農山村のどこに行っても多くの人で溢れていたことにも驚かされました。越後妻有トリエンナーレが農山村を舞台にしているのに対して、水と土の芸術祭のほうは対照的に、県庁所在地の都市空間を舞台にしていて、ビルや住宅が建ち並び、車や人が行き交う街並みにアクセントを加えていました。こちらは日帰りで出かけたのですが、やはりほんの一部しか見られませんでした。特に印象的だったのが、巨大な廃墟とでもいうべきメイン会場万代島旧水揚場における大友良英×飴屋法水たち、原口典之のインスタレーション、そして、時間のエアポケットに嵌り込んだかのような沼垂市場における白川昌生と小野田賢三の沼垂ラジオで、都市の中で忘れ去られたようなニッチな空間に新たな息吹を与える試みは新鮮でした。我が群馬でも、農村部を会場にした中之条ビエンナーレがありますが、都市部を会場にしたアートフェスティバルはまだありません。アートフェスティバルの効果としては、観光客の増加、文化資源の発掘と活性化、地域住民の意識向上、地域ブランド力向上など、さまざまなものがあります。大勢の人たちがアートを通じて交流を図っている様子を見ていると、群馬ならではの切り口で新たなアートフェスティバルができるといいな、と思います。

  さて、今回は、渋川市の中心商店街のうち、北西方面を散策することにしましょう。小野池あじさい公園の駐車場に車を停め、歩き始めます。あじさい公園の遊歩道の周りには8,000株のあじさいが密生し、以前開花期に訪れたことがあるのですが、清涼感ある花々の饗宴は見応えがありました。清流を遡るように園内を歩いていると、高台に大きな池が現れます。江戸期の天保年間に、当地の名主小野沢平左衛門が、南東部に広がる水田用の貯め池として整備したもので、小野池と名づけられました。現在は釣り場として利用されていて、この日も釣り客が糸を垂れていました。園内には、松尾芭蕉の句碑「紫陽花や帷子どきのうす浅葱」をはじめ3つの文学碑が建っています。市役所通りを北に向かい、県道33号(渋川松井田線)にぶつかるので右折すると、すぐに渋川八幡宮が現れます。本殿は慶長7年(1602)、拝殿は明治35年(1902)に建立され、本殿は県指定重要文化財となっています。県道33号を東に進むと、左側に虚空蔵塚古墳が現れます。古墳時代後期(7世紀後半)に築かれた直径13メートルの横穴式円墳で、積み上げた石の切り方、組ませ方の精緻さに感心します。T字路にぶつかると路傍に芭蕉の句碑「八九間空で雨ふる柳かな」が建っています。この日ふたつめの芭蕉の句碑です。

小野池

小野池

  T字路を右折し、少し南に下ったところを左折して住宅街の中を進み、八坂神社を眺めてから、真光寺に向かいます。真光寺は、平安初期に慈覚大師円仁が開山した名刹で、境内には、宝暦10年(1760)に即身仏(生きたまま入棺し念仏を唱えながら入定)した得蓮大徳の入定石や、約百名の髪結床が安政3年(1856)に祀った「壱銭職の聖徳太子塔」などがあります。真光寺の北側にある渋川北小学校の東隣には、靖国神社と並木児童公園があり、眼下に渋川の街並みを眺めることができます。住宅街の中の道を南に進むと、正蓮寺が現れます。ここはぼたん寺として知られていて、開花期には庭が開放され、以前ぼたんに彩られた周遊型の見事な庭を散策したことがありますが、シーズンオフのこの日は庭が閉ざされていました。かつて渋川城(寄居城)のあったところで、元眼3年(1572)に真田幸隆が築城しましたが、現在は堀や土塁がわずかに残るばかりです。正蓮寺の辺りを境に、東と南は区画整理が進み、明るいきれいな街並みになります。東に進み、寄居町の交差点を南に向かうとすぐに小さな秋葉神社が現れます。その横には、日本の真ん中を意味する「へそ石」、「日本の臍中心標」、昭和59年建立の「へそ地蔵」が並んでいます。へそ地蔵にはウルトラマンのカラータイマーのような赤い大きなへそが付いていて、案内板には、参拝の仕方は地蔵のへそを撫でてから合掌するようにと書かれています。

 道の反対にある中華料理欄恵で遅いお昼を食べてから、渋川駅方面に向かってしばらく南に進み、県道33号を右折します。かつての群馬銀行の営業店をリノベーションした渋川市美術館がありますが、道沿いの大半の店舗は、区画整理や道の拡幅等に合わせて新しく建て替わっています。しばらく進むと、旧渋川公民館の3階建ての典雅な姿が見えてきます。この建物は、昭和6年に渋川信用組合として建てられ、北群馬信用金庫、渋川商工会議所、渋川公民館等の変遷を経て、一時は取り壊す計画もありましたが、市民による保存運動が実を結び、平成23年7月27日に市指定重要文化財となり、今後、移転・改修の上商工会議所の事務所として利用されることになりました。数年前、取り壊し計画を知った際、写真を撮りに来た覚えがありますが、アールデコ様式のクラシックな佇まいをこれからも見ることができるのは大きな喜びです。県道25号を左折すると平沢川が現れるので、川沿いの道を西に向かって進み、小野池あじさい公園まで戻りました。

旧渋川公民館

旧渋川公民館

文/企画課 新井基之

●今回ご紹介したコース