群馬県信用保証協会

佐久発電所周辺の道

折々の散歩道

水と空の澄んだ青さを感じる道

渋川市

 本連載は連載開始から7年近く経過したところですが、このところつくづく感じるのは、インターネットの地図検索サービスの充実ぶりです。連載開始当時も、地図検索サービスの地図を利用して散歩のプランを組み立てていましたが、最近は、航空写真もよく参考にしています。ご存知の方も多いと思いますが、地図検索サービスの中には、クリックひとつで地図から航空写真に切り替えられるものがあります。この機能、市街地ではさほど必要ではないのですが、農山村を散歩する際には威力を発揮します。農山村を歩いていて一番困るのは、民家がまったく見当たらないときで、適度に集落が現れないと、散歩が味気ないものになってしまいます。登山やハイキングならば、自然を味わうことに重点が置かれるのでしょうが、本連載の「散歩道」というタイトルには「人の暮らしの営みが感じられる道」という意図を込めていて、自然よりも人とその生活に重点を置いているからです。散歩コースを組み立てる際、地図で眺めているだけだと、民家が多い道なのか見当がつかないのですが、航空写真を見ると一目瞭然で、とても便利です。このように長いこと地図と航空写真を利用ながら散歩をして気づいたことがあります。それは、まっすぐに伸びた道沿いには新しい建物が多く(古くからの街道は別ですが)、くねくねと曲がった道沿いには古い建物が多い、ということです。今回の連載は、渋川市を訪れ、東京電力佐久発電所周辺を散策したのですが、地図検索サービスの航空写真を活用して、古い民家の多く残る味わいのある道を見つけることができました。

 愛宕山ふるさと公園に車を停め、歩き始めます。この公園は、真壁調整池に隣接する愛宕山の斜面にあり、遊具の設置された子供広場や芝生広場、林の中の散策路、テニスコート、弓道場などがあります。また、江戸時代中期から昭和40年代にかけて旧北橘村に約40ヶ所あった精米・製粉用の水車小屋が復元されています。公園を出て真壁貯水池に沿って歩きます。真壁貯水池は、昭和3年の佐久発電所建設に伴い、発電用の調整池として作られ、利根川の綾戸ダムで取水された水が導かれ溜められています。池面に目をやると、多くの水鳥たちが、冬の空っ風を身に受けながら、思い思いに羽を休めています。やがて左折して池から離れ、細い道を進みます。農地の中に民家が点在し、大きな木造の農家建築や白壁の蔵などを見ることができます。赤い鳥居をくぐると貯め池があり、その先の木立の中に、赤城神社の本殿と神楽殿があります。ここで奉納される下南室御太々神楽は、市指定重要無形民俗文化財となっています。本殿の左側を進むと車道が現れ、その先に金毘羅神社の石の鳥居があります。数日前に降った雪が残る急傾斜の長い階段を足元に注意しながら登ると、本殿が現れます。

 金毘羅神社と赤城神社の間を走る車道を東に向かいます。やがて県道159号にぶつかるのですが、地図検索サービスの航空写真によると、その手前の道を右折したほうが民家が密集しているようなので、そちらに進むことにします。案の定、古い集落の中に、懐かしい佇まいの火の見櫓を見つけることができました。青い寒空にすっくと伸びる雄姿は美しく、しばらく見とれました。やがて真壁調整池沿いの道にぶつかるので、左折します。県道159号の辺りからは、池を手前にして驚くほど長い裾野を持つ榛名山の姿を見ることができます。県道159号から分かれると右側に松林があり、やがて真壁ダムのコンクリートの堤体が現れます。左側には群馬用水が流れており、ダム堤の下の大きくえぐられた箇所には、用水専用の赤い鉄橋が架かり、橋の上を水が勢いよく流れています。赤い橋の下をくぐり、水圧鉄管の導水路に沿って佐久発電所に向かいます。最初のうちは導水路は土に覆われていて、芝生に覆われた丘陵状になっています。間もなく水圧鉄管が現れます。内径は4.3〜4.6メートルと大きく、下方にあるサージタンクまで1343.5メートルもの長さがあります。鉄管の両側には並行して道があり、農地の中に民家が点在するのどかな風景が広がっていますが、ひとたび鉄管とその下に聳えるサージタンクに目を転じれば、風格ある威容に圧倒されます。水音は聞こえませんが、この中を水が流れ落ちているのか……と想像しながら緩やかな下り坂を進みます。県道34号(渋川大胡線)を超えると、鉄管の周囲は桜並木となり、開花期には関水さくらまつりが開かれ多くの人出で賑わいます。

水圧鉄管

水圧鉄管

 佐久発電所のシンボルともいえるサージタンクは、昭和3年に竣工、昭和60〜63年には水圧鉄管等とともに改修工事が施され、地上高81.4メートルの銀色に輝く円柱は、真下から見上げるととても迫力があります。県道156号に出て北橘総合グランドに向かい、サージタンクを眺めます。佐久発電所という名前は、建設した関東水力電気の創設者浅野総一郎の妻「作」の雅号が「佐久」だったことからつけられました。県道34号を進むと、やがて北橘歴史資料館があり、周囲はたちばなの郷公園として整備されています。園内には前述の改修工事の際に取り換えられた古い水圧鉄管が設置されています。県道34号から分かれ鉄管に沿って北へ向かい、途中で左に逸れ、古い集落の道を進みます。ここで、この日ふたつめの火の見櫓を見つけました。辺りは典型的な農家建築が残る雰囲気のいい集落で、まるでタイムスリップしたかのような気分になります。北橘中学校のすぐ横にある杉並木の参道を進むと、愛宕神社の本殿があり、その横の金網に覆われた中には、水道の配水池と愛宕山山頂(286.3メートル)を示す三角点を見ることができます。日射しを浴びてきらきら輝く真壁調整池を眺めながら、駐車場に戻りました。

佐久発電所サージタンク

文/企画課 新井基之

●今回ご紹介したコース