群馬県信用保証協会

大久保宿周辺の道

折々の散歩道

歴史の蓄積を今に伝える道

吉岡町

 道を歩いていてふいに目に留まる路傍の石仏や石塔は、心和ます存在です。かつては住民の深い信仰に支えられていたに違いないのですが、現在では排気ガスにまみれて顧みられることがありません。しかし、中には、美しい布をまとったり、お供え物があるのを見かけることもあり、地元住民の優しいこころに触れ、嬉しくなります。

 さて、今回は、北群馬郡吉岡町を訪れ、大久保宿周辺の道を散策しましょう。JR上越線群馬総社駅の有料駐車場に車を停め、歩き始めます。駅舎は、大正10年に開業当時のものを増改築していますが、現在も往時の面影を残し、懐かしい佇まいをしています。ロータリーの傍らには、地場産業であるこけし製造の先覚者関口専司氏の頌徳碑が、男女一対のこけしに挟まれて建っています。県道107号を南に向かい、県道15号(前橋伊香保線)にぶつかったところに立石諏訪神社があります。この神社は天正18年(1590)に総社領主となった諏訪頼永が勧請、明治31年の利根川洪水で流失し現在地に移転しました。獅子舞の奉納が伝わっているほか、古い石仏や石碑等がたくさん残っています。高井の信号を右折し北に向かうと、観音寺の境内に、旧佐渡(奉行)街道の案内板が立っています。佐渡街道は近世に整備され、佐渡奉行や北国大名が往来した街道でした。観音寺は元禄4年(1691)に創建され、本堂は平成22年に焼失してしまいましたが、現在は再建され、白木と白壁が清廉な印象を与えます。この寺にも石造物がたくさんあり、中でも三面六臂の馬頭観世音は見応えがあります。

 通り沿いの古い建物を眺めながら佐渡街道を北に向かい、吉岡町に入ると、牛王頭橋の近くに石仏等が集められた一角があります。牛王頭川を渡ると大久保宿に入り、宿場がここから駒寄川まで約2キロ続くことから「大久保の長宿」と呼ばれていました。道の左右には古い建物が比較的よく残されていますが、ほとんどが広い敷地をもつ蚕室造りの農家建築で、白壁の土蔵を併設しています。宿場町というと、一般的にはうなぎの寝床のように間口が狭く、建物の正面が街道に面した商家建築が軒を連ねているものですが、大久保宿は異なっています。江戸中期に三国街道(現県道25号・高崎渋川線)が整備されてから、往来が次第に少なくなっていったそうですが、農家建築が多く残されている理由はそのあたりにありそうです。ともあれ、このような農家建築は、立派な門と壁に敷地が覆われていて、北西は防風林で覆われ、建物は奥まったところに南向きに建てられているので、外からはよく見えません。しかし、ゆっくり歩けば、自動車で走っていると見逃がしてしまう部分まで見ることができます。車の往来が多いのが難点ですが、散歩ならではの良さを感じさせてくれる道です。
やがて大泉寺が現れます。境内に立つ芭蕉句碑「鐘撞ぬ里は何をか春の暮」は、戦後地中から掘り出されたもので、いつ頃作られたものか定かではありません。ほかにも境内には、明治初年に廃寺になった大久寺から移された不動尊があり、真紅に塗られた背の火炎が印象的です。上毛大橋からつながる県道161号を渡り、再び佐渡街道を進みます。相変わらず古い農家建築のまち並みが続き、中には驚くほど大きなものもあり、しばらく見とれてしまいます。石仏や石塔も路傍に点在し、何度も足を止めるので散歩はなかなかはかどりません。元禄15年(1702)に設置された双体の子育て地蔵尊は愛らしく、つい笑みがこぼれます。案内板に従って左折し数十メートル進むと、住宅街の中に三津屋古墳が現れます。この古墳は7世紀中頃に作られ、全国でも極めて数の少ない正八角形をしていて、県の指定史跡となっています。石に覆われた端正な姿は古墳とは思えない不思議な雰囲気をまとっています。佐渡街道まで引き返して再び北に向かうと、間もなく大久保宿の北端である駒寄川に架かる駒寄橋があります。伊香保街道はここで分岐し、「右ゑちご志ぶ川左いかほ水さハ」と刻まれた道しるべが立っています。佐渡街道から分かれ、東へと坂道を下り、JR上越線を渡ると、長松寺が現れます。この寺の境内のうち北側にはかつて漆原城がありましたが、現在遺構は残っていないようです。寺に隣接している矢落観音は、通称ざる観音と呼ばれ、吉岡音頭の碑などが立っています。この先は農地の中を通る新しい道を進みます。吉岡川、天狗岩用水を渡り、道の駅よしおか温泉に到着します。ここはリバートピア吉岡、物産館かざぐるま、吉岡町緑地運動公園で構成されていて、リバートピア吉岡に併設されたレストランでお昼を食べました。

三津屋古墳

 近くに利根川からの取水源がある天狗岩用水に沿って南に向かいます。天狗岩用水は、慶長7年(1602)に総社領主秋元朝長により工事が始められ、名前の由来は、大きな岩が工事を阻んでいたところ、朝長の夢枕に天狗が立ち、翌日に岩が消えていた、という伝承に基づきます。すぐに、昭和57年に運転を開始し、小規模な水力発電を行う天狗岩発電所が現れ、近くには白い大きな吉岡風力発電所がすっくと立っています。西は農地、東は緑地公園というのどかな用水沿いの未舗装路をしばらく進むと、吉岡川と天狗岩用水が立体交差している辺りから舗装道となり、切通しのような急坂を登り新しい道を南に進むと、鎌倉末期創建と伝わる川原田山不動尊が現れます。利根川が削り取った急斜面に立ち、幾つも並ぶ赤い鳥居が特徴的です。前橋市に入り、上毛大橋のすぐ脇を渡り、静かな住宅街の道を進みます。やがて、墓地と一体になった薬師塚古墳、そしてその先に桜が丘の百庚申塚が現れます。この先は大きな製造工場と住宅街が併存するまち並みが続き、群馬総社駅に至ります。

水圧鉄管

大久保宿

文/企画課 新井基之

●今回ご紹介したコース