群馬県信用保証協会

千津井・上江黒・下江黒・斗合田の道

折々の散歩道

緑輝く農村と利根川の土堤を歩く

明和町

 先ごろ、前橋フィルムコミッションの方に、前橋中心市街地のロケ地巡りを案内していただく機会がありました。なんの変哲もない店舗やまち並みが、ロケ地として使われた場所だと聞くと、にわかに風景のイメージが変わってきます。映画やドラマ、テレビCMの内容や世界観が風景に重ね合わされ、まるで目の前の店舗やまち並みが、架空の舞台のように思えてきます。ここ数年来、前橋がロケ地となった映画やドラマ、テレビCMなどが増えていますが、前橋フィルムコミッションの力によるところが大きいでしょう。とはいえ、年間300件ほどの問い合わせがあるうち、実際に撮影までこぎつけるのは約1割とのことで、裏ではいろいろな苦労があるようです。全国的にもフィルムコミッションは増えていて、群馬県内には幾つか存在します。今から20数年前の学生時代、山陽地方を巡る旅行の際に尾道に立ち寄ったことがあるのですが、当時「転校生」「時をかける少女」など大林宣彦監督の映画の舞台となったまちとして注目を集めつつありました。自分が訪れたいと思ったのは、映画に登場する尾道の風景がとても美しかったからで、ロケ地巡りという意識は薄かったのですが、まちを歩いていると、映画の資料を手にした若者たちに多く出会いました。映画やドラマ、テレビCMの魅力により人々がロケ地巡りに来ることは、観光面から有意義なことですが、まち自体に魅力がなければ、一過性のものに終わってしまいます。一度そのまちを訪れた人が、そのまちのファンになり、何度も訪れたくなることが最終的な目的であり、ロケ地巡りはそのきっかけに過ぎません。また、映像を制作するクリエイターの眼により、これまで気づかなかったまちの魅力を発見されることもあるので、フィルムコミッションの活動はきっとまちの活性化につながっていくことでしょう。

 さて、今回は、邑楽郡明和町の千津井・上江黒・下江黒地区を訪れ、緑鮮やかな農村風景を楽しむことにしましょう。千津井にある三嶋神社の駐車場に車を停め、歩き始めます。三嶋神社は千津井地区の鎮守ですが、周囲に木々はほとんどなく、明るい境内には古い石造物が立ち並んでいて、最も古い延宝8年(1680)の青面金剛像は、なかなか愛らしい姿をしています。神社の北側に進むとすぐに邑楽用水路を渡ります。邑楽用水路は、明和町の西隣の千代田町に昭和43年に完成した利根大堰に伴い作られたもので、この用水により近隣地域における農業用水の安定供給が可能になりました。北に向かい、密乗院を経て県道304号(今泉館林線)を西に曲がると、県道369号(麦倉川俣停車場線)にぶつかります。少し南に行ったところに、洒落た店構えの「そば処鄙」があるので、冷たいそばで残暑の厳しい日差しでほてったからだをクールダウンします。

 県道369号を北に進むと、東西に横切る桜並木路が現れます。この並木路は、明和町役場の近くにあるふるさとの広場から東北自動車道まで、全長2.7キロ、321本の桜が植えられています。並木路に隣接して、平成22年に完成したスズカケ公園があり、広い駐車場は周辺を散策する際の拠点に適しています。JA邑楽館林千江田支所には、大きな石積み倉庫があり、石の質感が美しい風格ある佇まいにしばし見とれます。上江黒の信号を右折して東に進み、上江黒東の信号を右折して更に右に曲がると、江黒古墳が現れます。7世紀後半の築造とされ、径約10メートル、高さ約3メートルのお椀を伏せたような円墳で、杉がたくさん植えられています。上江黒東の信号に戻り再び県道369号を東に向かうと、道は高架橋になり、東北自動車道の上を通ります。眼下にある高速道路を橋の上から見下ろすというのはこれまで体験したことがなかったので、猛スピードで行き来する車の群れをしばらく眺めました。高架橋を下ると、南側は広大な水田地帯となり、その奥には利根川の土堤が見えます。日差しを浴びて緑色に輝く稲が延々と連なっているさまはえもいわれぬ美しさです。やがて北側に、長良神社の赤い鳥居が見えてきます。長良神社は、江黒地区(江戸時代から明治22年までは江黒村で、明治22年から大字江黒、昭和52年に東北自動車道の西が上江黒、東が下江黒に分かれました。)の鎮守で、文明2年(1470)の勧請と伝えられています。大きな樹々に覆われた境内の雰囲気は、神社の長い歴史を感じさせてくれます。東に進むと、斗合田集落センターの入口に、小さな社殿の愛宕神社があります。小丘陵の上に建っていて、丘陵部は古墳であるようです。再び東に向かい、南側の水田地帯の中にこんもりとした林が見えてくるので、県道369号から逸れて、そこを目指して未舗装の道を進みます。林の南側に回ると、林に隠れるように長良神社があります。先ほども同名の神社がありましたが、長良神社は藤原長良公を祀っており、群馬の東毛地域を中心に各地に点在しています。

利根川堤の道

 邑楽用水路を渡り、草に覆われた斜面を登りつめると、利根川の土堤になります。土堤の上には歩道が続いていて、しばらくこの歩道を西に進みます。南側は広大な河川敷となっていて、草や木が繁茂する中に利根川が見え隠れしています。一方、北側は水田地帯が広がっていて、とても開放感のある気持ちのいい道です。東北自動車道の利根川橋が次第に近づいてきます。水田の中に、小さな松の木が立ち、その根元に石祠があるのが見えてきますが、テレビドラマ「嫌われ松子の一生」のロケ地として使われました。ほかにも、近辺の利根川の河川敷は、仮面ライダーシリーズのロケでよく使われているようです。利根川橋は、昭和47年に完成し、全長640メートル、白い塗装が青い空と緑の河川敷によく映える美しい橋です。橋をくぐり土堤の道を更に進むと、やがて南に下りる道が現れます。これは県道304号線(館林今泉線)で、利根川で分断されていますが、対岸の羽生市今泉まで続いていて、昭和63年まで千津井の渡しで結ばれていました。ここで土堤を下り、邑楽用水路に沿って三嶋神社まで戻りました。

東北自動車道利根川橋

文/企画課 新井基之

●今回ご紹介したコース