群馬県信用保証協会

休泊川周辺の道

折々の散歩道

工業団地とレトロな風景が並存するまち

大泉町

 最近知り合ったアートファンに、前橋市の魅力的なスポットを案内する機会に恵まれました。半日という短い時間の中で、お勧めスポットを厳選して効率的に回れるルートを考えたのですが、最初に訪れたのは、現代美術の展覧会をよく開催している若月法律事務所ギャラリー。開催中だった照屋勇賢展は事前連絡制なのですが、オーナーの若月さんの丁寧な解説を聞きながら鑑賞するのは何とも贅沢な体験でした。次いで足を運んだのは、臨江閣。南側の日本庭園から眺める姿も美しいのですが、見所は別館2階の大広間で、何度訪れても圧倒される空間です。それから街なかに移り、プレオープン展示中だったアーツ前橋を鑑賞してから、馬場川通り、中央通りを経て弁天通りに向かい、昨年オープンした現代美術ギャラリー、ヤーギンズで加藤アキラ展を見て、最後に呑竜仲店にあるヤギカフェでお茶をして締めくくりました。今回はアートファン向けだったのですが、歴史好きや文学好き、建築好き、カフェ好きなどに適したコースも、頭の中で組み立ててみたところ、なかなか面白いコースができあがったので、さっそく誰かを案内したくなりました。

 さて、今回は、大泉町を訪れ、住宅地、工業団地、農村風景など多様な面を持つまちの魅力を味わいましょう。大泉町の東寄りに位置する御正作公園の駐車場に車を停め、歩き始めます。御正作公園は、周囲に桜が植えられている大きな池や、淡黄緑色のウコン桜がある芝生広場、遊具広場、ソフトボール場などで構成されています。昭和60年に完成した公園ですが、工事中に、旧石器時代と古墳時代前期の遺跡が発見され、御正作遺跡と名づけられました。旧石器時代(約3万年前〜1万年前)の遺跡からは、ナイフ形石器や、石器を作る石核(せっかく)が、古墳時代前期(4世紀〜5世紀)の遺跡からは、台付き甕(かめ)や器代(きだい)などの土器が出土しています。公園の北には隣接して、多目的交流施設であるいずみの杜があります。ホールやトレーニングルーム、会議室、プール、浴室等がありますが、なんといっても目を引くのは展望室。未来的なデザインの高さ40メートルの塔で、週末は夜9時まで開放されているので夜景も楽しめます。公園を出て南に向かい、最初の信号を右折して県道38号(足利千代田線)を超え、休泊川を渡ります。木に覆われた小さな丘が見えてくるので、川沿いの道を左折して丘の南に回ると、そこが神社であることが分かります。浅間神社は、富士山信仰の神社で、最近まで周辺の地名は「字富士之越」でした。毎年6月1日には、300年前から伝わる風習「初山」が行われているのですが、これは、1歳未満の赤ちゃんの額に朱判を押すと、富士山に登ったのと同じ効果があるとされています。

御正作公園

 ここからは、休泊川沿いの道をしばらく進みます。コンクリートによる護岸工事がしっかりされていて少し風情には欠けますが、それでも川沿いに歩くのは気持ちのいいものです。間もなく富士堰が現れ、ここで分水されて新谷田川が南東へ流れ出しますが、南西に向かう休泊川沿いの道を引き続き進みます。住宅街の中の静かな道がしばらく続きます。川から少し逸れたところにある吉田西公民館の隣に、白山神社があります。ここには、江戸時代末期から明治初期頃に始められた吉田西里神楽が伝えられていて、町指定重要無形文化財となっています。再び休泊川沿いの道を進むと、大利根工業団地の北西の端に出ます。休泊川は工業団地の西側を南北に流れて、左手に味の素冷凍食品関東工場をはじめ大きな工場が建ち並ぶ様子を、右手に住宅街や農地が広がっている様子を眺めながら、しばらく進むと、川に水門が現れ、その先は暗渠となって川は地下にもぐります。農地の脇の未舗装の道をまっすぐに進むと、突然視界が広がり、利根川の土堤に出ます。土堤の下から、休泊川の水が利根川に流れ込んでいるのが見えます。いったん利根川から離れ、土堤の下にある児島神社に歩を進めます。深い木立に包まれた広い境内はとても静かで、遊具の設置された広場が隣接してあります。この近辺の風景は、先ほどまでの工業団地と打って変わり、懐かしい昭和の風情を色濃く残しています。児島神社の前にある利根川の土堤へ続く道を登り、しばらく土堤の上の道を東へと歩きます。緑に覆われた広大な河川敷の中を蛇行して流れる利根川を眺めていると、雄大な気分になってきます。

 土堤の道から降りて、農地の中の道を北に向かうと、県道314号(古戸館林線)にぶつかるので、左折して西に進みます。すぐに高徳寺が、隣接して長良神社が現れ、道の反対側には、今となっては珍しい火の見櫓が、昔のままの風情で佇んでいます。大泉町で火の見櫓を見つけられるとは思ってもいなかったので、これはうれしい誤算です。県道314号に沿って北に向かうと、再び大利根工業団地が現れるので、工業団地の中央部を縦断するように進みます。大きな工場が建ち並ぶ中で、とりわけ目立つのが凸版印刷群馬工場です。シルバーメタリックに輝く外観と、パイプやダクトが屋根や壁面に複雑に配管されている様子はSF的な迫力があり、「工場萌え」ならずとも一見の価値があります。工業団地を抜けて住宅街を進むと、長良神社が現れます。先ほどの古海地区、そして今度の吉田地区、どちらにも同名の神社があるのですが、いずれも平安時代前期の公卿藤原長良を祀ったもので、邑楽郡や館林市の周辺には、同名の長良神社がたくさんあります。神社を北に向かうと、みよし保育園の先にレトロな長屋が建ち並ぶ一角があります。既に取り壊しが進んでいて、残された長屋も空室が多く、近いうちになくなってしまうようです。北東へ向かい、県道38号線(足利千代田線)を経て、大泉町文化むらを目指します。文化むらは、大ホール棟、展示ホール棟、資料館からなる大きな複合文化施設で、いずみの杜とともに、大泉町の文化施設の充実ぶりには目を見張るものがあります。瀟洒な住宅街を抜けて、御正作公園まで戻りました。

古海長良神社近くの火の見櫓

文/企画課 新井基之

●今回ご紹介したコース