群馬県信用保証協会

白沢地区の道

折々の散歩道

春風に誘われて歴史ある農山村を歩く

沼田市

 今年の2月14日から翌日にかけて、群馬県内は記録的な大雪に見舞われましたが、14日の仕事帰りに歩道で滑って転び、肋骨を骨折してしまいました。ビジネスシューズはとても滑りやすいからとか、カバンを持っていて手がつけなかったからとか、いろいろ言い訳をしたのですが、一番の要因は、運動不足による運動神経の退化であることを認めざるを得ません。しかし、歩道の状態にも原因の一端がありました。前の週に降った雪が除雪されないままこちこちに凍りついた一角があったのですが、その上に新雪が積もると、除雪されたところと見分けがつかなくなり、とても危険な状態になるのです。新雪の下の凍った雪に不意を突かれて転倒したのですが、同じようなシチュエーションで怪我をした方は結構いるのではないでしょうか。歩道も含め道路は公共のものではありますが、降雪時などは近隣住民が雪かきをするのが社会道徳となっています。しかし、この大雪の際には、オフィス街や住宅街において、何らかの事情で、雪かきがされないまま放置されているところが結構目につきました。自分が転んだのはとある会社の事務所の前だったので、この会社だけどうして雪かきしていないんだ……とちょっと恨みに思ったのですが、骨折したせいで、我が家の前の道路の雪かきも大幅に遅れることになったのだから、他人のことを攻めることはできません。いずれにしても、今回の大雪は農作物をはじめとして大きな被害と多くの課題を私たちに残しましたが、被害を受けた皆さんのいっときも早い復旧をお祈りいたします。

 さて、今回は、沼田市の白沢地区を訪れ、春の訪れた農山村風景をのんびり味わうことにしましょう。道の駅・白沢に車を停め、歩き始めます。道の駅・白沢には、日帰り温泉施設「望郷の湯」や農産物直売所、見晴台、広場などがあり、多くの人で賑わっています。北に進むと国道120号にぶつかりますので、右に折れ東に向かいます。しばらくすると土堤が現れるので、登ってみると、貯水池がありました。案内板を探したのですが出ておらず、名前は分かりません。土堤沿いには桜並木があり、散策に訪れた4月中旬、ちょうど満開を迎えていました。その先には国道120号に沿って細い水路があるのですが、珍しいことに、真ん中に壁があり2本に分かれています。分水するための仕掛けのようですが、前橋市の馬場川でも同じようなものを見たことを思い出しました。固まって建っている白沢保育園、白沢中学校、白沢小学校を通り越すと、白佐波神社が現れます。慶安2年(1649)創建で、当初は武尊神社と呼ばれていましたが、明治時代に周辺の神社を合祀した際に改称しました。国道120号沿いに2本植えられた桜が鮮やかで、大きな杉が立ち並ぶ境内は「うつぶしの森(うっぷしの森)」の名前で知られています。その由来は、南北朝時代、南朝の重臣新田義貞の死後、越後に逃れていた三男の新田義宗が再起を期して正平23年(1368)この地で足利の大軍と戦った末、うつ伏せで落馬して死を迎えたことによるもので、ご神体の新田義宗公木像は、市指定重要文化財となっています。国道120号の反対側には、小さな社殿と鳥居だけの須賀大神があります。

白佐波神社

 国道120号を再び東に進みます。左側に立つ「武尊山雲谷寺参道」と刻まれた石柱を通り越すと、白壁の土蔵をリノベーションしたパン屋「鍵屋」が現れます。その隣には、県指定重要文化財の高平の書院が建っています。慶安2年(1649)沼田城主真田信政が新田開発や宿割等を実施した際に建築され、その後18世紀中頃に書院風に建て替えられ、城主の領内見回りや鷹狩りの際の休憩所として利用されてきました。古雅にして格調のある建物を守っているかのように、その前に大きな五葉松がそびえています。書院の庭木として同時期に植えられたもので、高さ18メートル、目通り2.5メートルという巨樹で、県指定天然記念物になっています。国道120号の反対側には、小さな石の地蔵が立ち、「伝承 高平の酒呑み地蔵」という案内板が添えられています。近くにある江戸中期から続く蔵元大利根酒造のホームページに、この地蔵にまつわる微笑ましい昔話が記されています。この辺りの国道120号沿いには、積雪対策で屋根が急傾斜になった古い木造の家が多く残り、火の見櫓も見つけることができ、風情を感じさせます。キッチンぱぱというレストランでお昼を食べてから、右にカーブする国道120号から逸れます。まっすぐに進むと実相院があり、参道には双体道祖神をはじめたくさんの石像が立ち並んでいます。少し戻ってから左のほうに歩を進めると、古い農家建築が建ち並んだ集落があります。

雲谷寺のシダレザクラ

 ここからは、静かな農山村の中の道が続きます。水が張られるのを待つ田んぼを眺めながら西へと歩を進めると、やがて雲谷寺参道にぶつかるので、右折して北に向かいます。雲谷寺は、元徳3年(1331)薩摩国から下った大師和尚が開基し、3基ある五輪塔のうちひとつが、うつぶしの森で非業の死を遂げた新田義宗の墓と伝えられています。五輪塔の後ろには高さ37メートル、目通り4.5メートルの大杉があり、市指定天然記念物になっています。それに劣らず見事なのは、参道や境内にある桜や枝垂桜で、ちょうど満開を迎えた枝垂桜の華やかさ、艶やかさには息を飲むほどです。雲谷寺から西に向かい、小さな集落を抜けると、小さな道標と案内板が現れます。旧会津街道の道標で「延享5年(1748)右東入道左くわんおん道」と刻まれています。変哲もない鄙びた山間の道なのですが、長い歴史を有していることを知ると、見る目も変わり、さまざまな想像が膨らみます。しばらく西に進むと、山の急斜面に稲荷大明神と書かれた鳥居と石段が築かれており、登りつめると杉林の中に小さな社殿が建っています。近くの路傍には馬頭観世音の石像や双体道祖神などもあり、かつての村人の信仰の篤さを感じさせます。南へと向かい国道120号を横切り、道の駅・白沢へ戻りました。

文/企画課 新井基之

●今回ご紹介したコース