群馬県信用保証協会

立岩・生品地区の道

折々の散歩道

農山村の豊かな自然と信仰の歴史を辿る

川場村

 平成26年7月30日の日刊工業新聞に「経済産業省は地域の商店街の大規模再開発を阻む法規制などの問題解決に乗り出す」という趣旨の記事が載っていました。経済産業省は現在地方自治体から商店街再開発の障害等を聞き取りしていて、呼び水となる成功モデルの組成を目指し、必要に応じて有識者会議を設置する方針とのことです。私たちの身近にある商店街を見ても分かるとおり、商店街活性化は非常に難しい問題です。過去数十年にわたり、官民挙げてさまざまな商店街活性化策に取り組んできましたが、どこも苦戦しており、往時の賑わいを取り戻したのはごく一部にとどまるのが実情です。しかし、今回の経済産業省の方針は、高松丸亀商店街の成功事例を参考に抜本的な再開発の仕組みを作ろうとするもので、大きな期待を寄せることができます。高松丸亀商店街は、定期借地権を利用し地権者から土地を長期に借り上げ、白紙の状態から街のグランドデザインを描き直してテナントミックスを行うなど、徹底的に利用者目線に立った再開発を、大規模、長期的、計画的に実施しました。個人的には、商店街の持つレトロな雰囲気と親しみやすさに愛着があり、また、商店街の歴史を感じさせる建物が一掃されてしまうことには寂しさを感じます。その辺りに配慮し、個々の商店街の特徴に応じた適切なコンセプトに基づき、古いものと新しいものがバランスよく配されたデザインの商店街に生まれ変われれば、きっとかつての賑わいを取り戻すことができるでしょう。

 さて、今回は、川場村を訪れ、立岩地区、生品地区を散策することにしましょう。道の駅川場田園プラザに駐車をして、歩き始めます。川場田園プラザは、関東「道の駅」連絡会が行う関東好きな道の駅アンケートで常にランキング上位にある、非常に人気のある施設です。自然豊かな広い敷地内に、新鮮な食材を使ったレストランや各種販売所、遊具、広場などがバランスよく配置されています。ちょうど収穫時期を迎えていたブルーベリー公園の無料摘み取り体験(食べ放題、持ち帰り不可)で、数粒だけ口に含んでから、売店「かわばんち」で川場村産コシヒカリ「雪ほたか」のおにぎりを買ってバッグに詰め、県道64号(平川横塚線)を南に向かって歩き出します。散策したのは7月下旬、全国的に高気温を記録し熱中症が相次いだ日だったのですが、川場村も午前中にも係らずものすごい暑さです。東側には稲を植えられた田んぼが緑の海のように広がっています。地図を片手に立ち止まっていると、道に迷ったと思ったのか、地元の女性が声をかけてくれました。これからどこに行くのかと問われたので、虚空蔵堂と答えると、一人で行くのなら熊が出るかもしれないので充分気をつけるように、とアドバイスをもらいました。確かにルーラルウォークにおいては野生動物との遭遇が一番の悩みのタネで、幾ら音の出るものを身につけていたとしても、不安は拭い切れません。間もなく県道64号を西に折れ、農家建築の建ち並ぶ道を進むと清岸院にぶつかります。正面は墓地で、一角に質朴で味わいのあるお堂があります。清岸院は天文3年(1534)開基で、虚空蔵堂も含め広い寺域を有し、石仏、石造物が点在し、樹齢400年の糸ひばのほか、800本の紫陽花、1000本の桜に彩られています。虚空蔵山の頂にある虚空蔵堂へは車道と石段二つのアプローチがありますが、石段へ歩を進めます。杉林の中の450段もの石段はなかなかハードで、日頃の運動不足とうだるような暑さで、虚空蔵堂に着く頃にはすっかりバテていました。虚空蔵堂は清岸院よりも古い天長4年(827)創始と伝えられ、現在のお堂は永禄3年(1560)建立、承応2年(1653)改築の風格あるもので、すぐ横には十数メートルの巨岩があり、山岳宗教、修験道の場であったことを窺わせます。裏手には眺めのよい東屋が設えてあり、おにぎりを食べてしばらく休憩しました。

虚空蔵堂

 450の石段を降り県道64号に出て、南へ進みます。地図を見ると、住宅地の中に標高527メートルの高根山が記されているので行ってみると、空き地が広がっていて山らしき形跡がありません。田沢川の手前を県道64号から西へ曲がり静かな道を行きます。延々と続く南側の田んぼが鮮やかで見事です。しばらく進むと北側に延命院が現れます。平安末期に西光寺として開基、正和3年(1314)に再興されました。清岸院同様、古い石仏に目が行きますが、今回のコースには、折々の路傍で石仏や石造物をたくさん見ることができました。この先はかつて慶安3年(1650)に宿割りが行われた生品宿だったところで、古い建築を今も多く見ることができ、家々の庭先には水場が残っています。宿場の途中を北に入ったところに武尊神社には、信州高遠の石工による鳥居と常夜灯があります。生品宿の一番西にはかつて生品尋常小学校があったことを告げる立派な石柱と銀色の火の見櫓が立っていますが、現在は生品多目的集会施設として利用されています。

 県道263号(富士山横塚線)を北に向かいます。桜川に架かる天神橋の上からは、何人かの釣り人が思い思いに糸を垂れている様子が見られます。道なりに北へと向かうと、天神の集落が現れ、小さなお堂の横には、母の慈愛が感じられる子安観音が佇んでいます。その先の天神集会場には、この日ふたつめの銀色の火の見櫓を見つけました。さらに北に進むと、下川場神社が現れます。ここは武尊神社ともいい、先ほどの生品武尊神社同様、片品村花咲の武尊神社から江戸中期に勧請分霊された利根沼田地区にある18の武尊神社のうちのひとつです。県道263号から東に逸れて農地の中の道を進むと、やがて利根沼田望郷ラインに出るので、右に折れて東へ進みます。桜川に架かる桜川大橋を渡り、しばらくすると薄根川に架かる薄根川大橋を渡ります。上流には清流公園があり、子供たちが元気に水遊びに興じる姿が見えます。熱中症寸前の状態で、ようやく川場田園プラザに戻りました。

子安観音

文/企画課 新井基之

●今回ご紹介したコース