群馬県信用保証協会

三和町周辺の道

折々の散歩道

ため池とともに多彩な歴史を辿る

伊勢崎市

 平成26年10月26日、赤瀬川原平さんが享年77歳で逝去しました。前衛的な美術作家であり、尾辻克彦名義で小説を書き芥川賞を受賞するなど、その活動は多岐に渡りますが、一般的に知られているのが平成10年に発行した『老人力』で、この本のタイトルは同年の流行語大賞を受賞しました。一方、散歩好きにとっても赤瀬川さんはとても馴染み深い存在です。南伸坊さん、松田哲夫さんらとの「超芸術トマソン」の活動や、藤森照信さん、林丈二さんらとの「路上観察学会」の活動は、書物等を通じて今も多くの人に影響を与えていて、散歩やまち歩きの楽しみを倍加してくれます。ちなみに超芸術トマソンは、昭和56年から57年にかけて巨人軍に在籍したアメリカの野球選手が名前の由来となっており、不動産に付着した無用の長物のことを意味します。この概念を生み出すきっかけとなった第1号物件は、昭和47年、赤瀬川さんらが東京四谷を散策中に見つけた階段で、旅館に附随していたのですが、改修工事の結果、登っても内部に入ることができずそのまま降りるしかない、まさに「無用」となったもので、これは無用階段、純粋階段と名付けられました。生涯を通じて、常識的なものの見方とは違う新たな視点を私たちの社会に投げかけ続け、それは時に過剰な議論を招くこともありましたが、赤瀬川さんの残した功績は非常に大きなものであったとつくづく思います。

 さて、今回は、伊勢崎市を訪れ、三和町周辺を散策することにしましょう。三和町周辺は、北関東自動車道伊勢崎インターチェンジや伊勢崎三和工業団地、ショッピングモールスマークがあるなど、開発が進んだ地域のように思われますが、少し逸れると、今もなお静かなまち並みが残っています。国道17号(上武道路)を前橋方面から南東へ進み、北関東自動車道と交差するあたりにある赤城見大橋交差点を右折して、国道462号に入ると、すぐ右側の道路沿いに、一ノ関古墳が現れます。隣にある駐車場に車を停め、古墳を鑑賞します。一ノ関古墳は、6世紀中頃に築造された小ぶりの前方後円墳で、史跡公園として往時の姿がきれいに復元されています。西側には粕川が流れ、全体が芝生で覆われて、石室が覗き込めるようになっています。国道462号を南に向かって歩き始めると、間もなく左側に八幡沼(新沼)が現れます。この沼は、灌漑対策のため川端宇兵衛翁が一念発起し先頭に立ち、地域の農民が費用を出し合い3年をかけて元治元年(1864)に竣工したため池です。すぐ近くを流れる粕川から取水しており、往時に掘った隧道が現存しています。八幡沼という名は、灌漑対策のため八幡宮を移転した上で開墾したことによるもので、沼に浮かぶ弁天島は、かつて八幡宮が建っていた場所でした。冬場のために水位が下がった沼に、水鳥たちが寄り集まって思い思いに羽根を休めています。東と南には桜が植えられて、春には麗しい風景を眺めることができます。沼の歴史を刻んだ碑や、遊歩道、東屋なども設えられ、地域の方々に親しまれていることが伝わってきます。

一ノ関古墳

 八幡沼の南東の交差点を南に向かってしばらく進むと、JA佐波伊勢崎の上植木倉庫が現れます。JAの倉庫は余り注目されることはないのですが、案外古いものが多く、この倉庫もなかなか風格があります。間もなく十字路が現れるので右折して西に向かうと、上樹神社が鎮座しています。かつての雷電神社に、近隣にある幾つもの神社を明治時代に合祀したもので、7基並ぶ鳥居がそのような経緯を物語っています。現在の社殿は慶応3年(1867)に竣工され、見応えのある彫刻が施されています。雨乞いの神である雷電神社や、灌漑対策で開墾された八幡池などから分かるとおり、この近辺は昭和時代に至るまで恒常的な水不足に悩まされてきました。上樹神社から東のほうへしばらく進んでいくと、北にこんもりとした丘陵が見えてきます。これは丸山塚古墳で、5世紀に築造され、全長81メートル、円丘部直径58メートル、高さ8メートルの前方後円墳です。過去2回の発掘調査で3個の石棺や埋蔵品が発見されましたが、現在は、冒頭に訪れた一ノ関古墳のように整備されておらず、案内板がひとつあるばかりです。引き続き東へと進み、県道293号(香林羽黒線)と両毛線を横切り、畑の中の道を進むと、左側に案内板が現れます。6世紀中頃の古墳時代後期に存在した豪族居館跡、原之城遺跡の在りかを示すもので、東西110メートル、南北170メートルの敷地を有し、周囲を幅20メートルの堀が巡っていました。このような遺跡としては全国でも最大級のものですが、残念ながら遺構は残っておらず、現在は農地が広がるばかりです。目の前には国道18号(上武道路)越しに大型ショッピングモールスマークが聳えており、不思議な対比を感じ取ることができます。

 来た道を両毛線まで戻り、踏切を渡って、線路沿いに北へ向かうと、やがて天野沼が現れます。ここは、市営の無料釣り場として、鯉、へら鮒、タナゴなどを釣ることができ、釣り人たちに愛され、寒風吹きすさぶ天気にも関わらず、この日も数人の釣り人が糸を垂れていました。沼には薄氷が張り、小さな鳥が氷の上をツトツトと歩いていました。周囲は公園のように整備されていて、桜もたくさん植えられています。天野沼から西に向かい、県道293号を渡ってしばらく進むと、男井戸川という細い川にぶつかります。ここからは西にある丸山塚古墳の全体像をきれいに臨むことができます。男井戸川に沿って北に進んでいくと、やがて鯉沼が現れます。この日既に訪れた八幡沼や天野沼よりも大きな沼なのですが、北関東自動車道伊勢崎インターチェンジが国道18号に合流する地点のすぐ横にあるので、余り風情を感じることはできません。訪れた日には沼の水が抜かれていて、今年(平成27年)3月20日までの工期で大規模な改修工事を行っていました。春にはきっと生まれ変わった美しい姿を見せてくれるでしょう。住宅と農地が混在する静かな道を西へ向かい、一ノ関古墳の駐車場まで戻りました。

天野沼

文/企画課 新井基之

●今回ご紹介したコース