群馬県信用保証協会

野栗・勝山地区の道

折々の散歩道

昔と変わらぬ農山村の景観

上野村

 博報堂と慶応大学の共同研究チームが、2014年2〜3月に1万5千人に対してアンケート調査をした結果をまとめた「地域しあわせ風土調査」が、インターネットで公開されています。総合ランキングの結果は、第1位が沖縄県、第2位が鹿児島県、第3位が熊本県、第4位が宮崎県、第5位が東京都、と続き、九州地方は概して高ランクでした。さて、我が群馬県はというと、なんと47位、つまり最下位という結果です。広く知られている地域ブランド力の低さにも釈然としないものを感じていますが、今回の調査によるしあわせ度も低ランクというのはまことに由々しき事態です。分析結果を見ると、「得意としていることがある」「何か、目的・目標を持ってやっていることがある」「人を喜ばせることが好きだ」「いろいろなことに感謝するほうだ」「いまかかえている問題はだいたい何とかなると思う」「失敗やいやなことに対し、あまりくよくよしない」「地域の知名度」「景観・まちなみ」「友人の数」といった項目が極端に低いことが分かります。残念ながら、ネガティブ志向・マイナス志向の方が多いということが分かりますが、逆に見ると、生真面目で慎重な県民性だと言えるのかもしれません。特に気になるのが、友人の数の少なさです。友人の数としあわせ度は相関関係があり、「友人が多い人ほど新しいことに挑戦でき、人に感謝の気持ちを持てる」「狭く深い関係よりも、幅広い関係が人のしあわせを後押ししている」と調査レポートにも書かれています。ここから先は筆者の推測になりますが、群馬県は、車社会で職場と家の間に寄り道をする機会が少ないこと、夏は暑く冬は空っ風が強い自然環境のため、時期によっては屋外に出ることを厭う傾向があることなどが、友人の少なさにつながっているのかもしれません。ともあれ、しあわせだと思うかどうかは自分の気持ち次第です。何ごとにも前向きに明るく取り組めば、その笑顔は周りにも伝播し、しあわせの輪が広がっていくことでしょう。

 さて、「地域しあわせ風土調査」の中で、群馬県は上述のとおり「景観・まちなみ」についても低ランクだったのですが、確かに、計画性のない開発による統一感のないまちなみが多いことや、取り壊されてしまった名建築や古い建築が多いことなど、残念ながら首肯せざるを得ないところがあります。今回は、上野村を訪れて、美しい景観が今も残されているまちなみを散策しましょう。藤岡方面から神流川に沿って走る国道462号、国道299号を車で西に向かい、上野村に入って間もなく、神流川が大きく蛇行する地点に宿泊施設ヴィラせせらぎが現れるので、駐車場に車を停め、歩き始めます。国道299号の下をくぐって神流川沿いに作られた遊歩道を進むと、葉を散らした樹々の間から、渓谷美を眺めることができ、堰堤を落ちる人工滝の蛇木の滝を通り越してしばらく進んだところで、来た道を折り返してヴィラせせらぎまで戻りました。

 ヴィラせせらぎから、神流川に架かる橋を渡って川の東側に行き、右折して南へと伸びる道を進みます。ヴィラせせらぎの南側には神流川の広々とした河原があり、暖かい時期になると水遊びをする家族連れで賑わいます。澄んだ川の流れが空の青を映し、開放感のある景観に癒されます。神流川に合流する野栗沢川に添って走る道を、南に進みます。道の西側は野栗沢川、東側は緩やかな傾斜地でぽつりぽつりと人家があり、ところどころ廃屋も見受けられます。やがて東側に宝蔵寺が現れます。文和2年(1353)越前国の僧が行脚に訪れた際、この地で阿弥陀仏を発見し堂を建てたのが創建の由来と伝わっています。参道沿いにはさまざまな石造物が並び、山門やお堂、土蔵などの境内の建物は、いずれも素朴ながら古格を宿していて、村人たちの信仰の歴史を伝えています。高台にあるお堂からは集落を一望することができ、お堂の前には樹齢約百年の大きなしだれ桜が植えられていて、春の開花期にはみごとな景観が現れます。境内の片隅で、風景を眺めながら、途中で買っておいた弁当を食べました。再び南に向かって歩を進めます。東側は斜面に農地と居宅が混在していて、昔ながらの農村風景を見ることができます。やがて、上野村野栗公会堂の敷地内に、火の見櫓が見えてきます。赤く塗られ、てっぺんに丸い傘を載せている、オーソドックスな古いタイプのもので、今も無事に残されていることに嬉しくなります。古い木造建築が建ち並ぶまち並みを眺めながら、引き続き南に進みます。集落のコンビニ的役割を担う桜井商店は、道の反対側にある倉庫との間に屋根がつけてあり、小さなアーケード街のようです。桜井商店のすぐ先を左折して、左右に農地が広がる細い道を登っていくと、乃久里神社の赤い鳥居が見えてきます。山に溶け込むように佇んでいる乃久里神社は、野栗集落の鎮守で、お川瀬下げ神事や野栗太々神楽などの伝統行事が残されています。杉の樹に囲まれた境内に社殿と神楽殿が建ち、自然石をそのまま利用した巨大な燈篭が目を惹きます。伝説では、日本武尊がこの地に立ち寄ったとき、弟橘姫の遺髪を従者を残し祀らせたのが神社の由来であり、従者が残ったことからこの地は「ノコリ(乃古理)」と名付けられ、やがて「ノグリ」に変化しました。神流川の名は、この遺髪を流したことから付けられたそうです。

乃久里神社参道

 橋の手前にある野栗食品の辺りまで進み、これまで来た道を折り返して北に向かって戻ります。左側に野栗沢川に架かる橋が見えてくるので、橋を渡り、右折して少し進むと、小さな丘陵に石段が付けられ、その上に小さな木造の社が建っているのが見えます。名前すら掲げられていない鄙びた社ですが、深い味わいがあります。さらに北へ進むと、すぐに新羽神社が現れます。この神社は村社で、杉林を背に建つ社殿には、見事な彫刻が施されています。再び北に向かうと、すぐにT字路が現れるので、右折をして野栗沢川に架かる橋を渡り、ヴィラせせらぎへ戻りました。

新羽神社

文/企画課 新井基之

●今回ご紹介したコース