群馬県信用保証協会

上州福島駅・上州新屋駅周辺の道

折々の散歩道

ローカル線沿いに歴史を辿る

甘楽町

 昨年(平成26年)10月号の本連載で、長野県茅野市を散策したことを書きましたが、建築史家・建築家の藤森照信さんの手がけた作品群のうち、個性的な茶室「高過庵」がメンテナンス工事中でブルーシートに覆われ見られなかったのですが、5月にリベンジに出かけ、念願の作品を見ることができました。また、前回の散策で見落とした、宮川地区の丸井伊藤商店にある疫病神神社にも行き、風変わりな願掛けを楽しんできました。

 さて、今回は、甘楽町を訪れ、上信電鉄の上州福島駅・上州新屋駅周辺を散策しましょう。福島にある笹森稲荷神社の駐車場に車を停め、歩き始めます。笹森稲荷神社は、県指定史跡の笹森古墳の墳頂部に位置しています。笹森古墳は、古墳時代後期の6世紀後半に造営され、全長約100メートル、高さ約9メートルの前方後円墳で、甘楽・富岡地方に現存する古墳の中では最大のものです。石室の長さは約16メートルで、3月の笹森稲荷神社例大祭のときにだけ内部を見ることができます。神社は、社伝によると天長2年(825)の創建で、その後現在地に移り、現在の社殿は明和7年(1770)に建てられたものです。山門や社殿は紅く塗られ、山門では見事な天井画を見ることができます。境内は笹森古墳すべてを収める広さを有し、大半はうっそうとした杉林となっています。境内を出て、静かな住宅街の道を北東へ進みます。やがて小さな公園と、その先にあるこんもりとした丘陵が見えてきます。これは町指定史跡の天王塚古墳で、別名を神明塚といい、5世紀初頭に造営され、全長約76メートル、高さ約9メートルの前方後円墳です。県道197号(下高尾小幡線)を南へ向かうと、右側に火の見櫓が現れます。すぐ先には、平成14年竣工の、町立図書館とコミュニティスペースの複合施設「ら・ら・かんら」のモダンな建物があります。

 信号を左折して東に進むと、間もなく町指定重要文化財である仁治の板碑が現れます。仁治3年(1242)の銘があり、群馬県内で2番目、全国でも11番目に古い板碑で、金剛界五仏の種子(梵字)が刻まれ、別名大日の碑と呼ばれます。不運にも、長いこと鎌倉街道の石橋に使われていて、貴重な板碑と判明し現在地に設置されたのは明治14年のことでした。3.48メートルと大きなものですが、石橋に利用されていたため、文字はだいぶ風化しています。左側に第一中学校が現れたところで右に曲がり、静かな住宅地の中の道を南へと進むと、次第に高台となります。農地の中の未舗装の道へ歩を進めると、小さくてさっぱりとした佇まいの神明宮が現れ、その先には、寶林寺があります。再び南へと進むと、庭屋川にぶつかるので、橋を渡らずに、川に沿って続く道を北に向かいます。やがて現れる十字路を右折して東へ進み、麻場城址公園を目指します。麻場城は、室町時代の文明年間(1469-87)に白倉氏によって築かれ、台地の上に立地し、0.5キロ西方にある仁井屋城と一対(別城一郭)で白倉城と名付けられていました。白倉氏は、小幡氏とともに関東管領上杉氏の重鎮でしたが、その後鞍替えし、天正18年(1590)に前田利家と上杉景勝の軍により降伏させられ、廃城となりました。城址は公園として整備されていて、建物は現存しませんが、土塁や空堀はよい状態で残っていて、往時の様子をイメージすることができます。

麻場城址公園

 再び東へとしばらく進むと、新屋小学校の手前に大日堂があり、小さな境内に石造物が点在しています。すぐ横を川が流れているのですが、川の名は三途(さんず)川といいます。皆さんご存知のとおり、「三途の川」とは、この世とあの世の境を流れる川のことをいいますので、この川は、珍しいスポットとして知られています。三途川に沿って走る道を、しばらく北へ進み、道なりに川から逸れながら、引き続き北へ向かうと、やがて国道254号(信州街道)にぶつかります。254号が三途川を渡る橋は三途橋と名付けられていて、そのほとりには、町指定史跡の姥子堂があります。建立時期は不明ですが、寛延3年(1750)の文書にその名を見ることができます。祀られているのは奪衣婆で、死者が三途の川を渡るとき、衣服を脱がせて、その重さで生前に犯した罪を判断する役割を担っています。庶民的な宗教感がリアルに感じられ、なかなか興味深い場所です。引き続き三途川に沿って北へ向かい、東へと蛇行するあたりに宝勝寺があるので立ち寄って、古い石造物を眺めます。三途川が県道203号にぶつかると、左折して、少し進むと、上信電鉄の上州新屋駅が現れます。大正14年に開業した木造のシンプルな駅舎は、外観にも、待合室にも、鄙びた味わいがあり、しばらく周囲をぶらぶらしながら電車を待ちます。国道254号を西へと歩くこともできたのですが、この日は5月にも係らず気温30度を超え、熱中症になりそうだったのと、たまには上信電鉄に乗ってみたいという気持ちがあったので、上州福島駅までの1駅分を電車で移動することにしたのです。無人駅の上州新屋駅では、数人の学生が降りて、乗車したのは自分ひとりだけでした。数分間車窓の旅を楽しみ、上州福島駅では、数人が乗降しましたが、やはり学生が目につきます。女性の駅員さんに切符を渡し、料金を支払います。こちらの駅は上州新屋駅よりも古く、明治30年に開業しました。駅を出て、県道205号を南へ進み、国道254号にぶつかると右折をして、西へ向かいます。やがて笹森稲荷神社の大きな鳥居が現れるので、これをくぐり、しばらく住宅街を進みます。道沿いに瓦店を見つけました。この周辺は、世界遺産登録された富岡製糸場の建築用煉瓦、屋根瓦を焼成していた地域で、既に天保11年(1840)から小幡藩が瓦製造を開始していましたが、明治初期の富岡製糸場建築時には人手が足りず、埼玉県深谷市から職人がやってきて手伝ったそうです。その後、福島瓦は地場産業として定着し、現在に至っています。笹森稲荷神社の駐車場まで戻りました。

笹森稲荷神社

文/企画課 新井基之

●今回ご紹介したコース