群馬県信用保証協会

西平井・金井地区の道

折々の散歩道

歴史と信仰の面影を宿す道

藤岡市

 6月下旬に1泊2日で札幌に出掛けてきました。所用があったため観光している時間が余りない、いささか慌しい旅だったのですが、札幌駅周辺を散策することができました。札幌には初めて足を運んだのですが、驚いたことが幾つかありました。1点めは、街の大きさと新しさ。大きな近代的なビルが広範囲にわたって建ち並び、しかもいずれも比較的新しいものばかりです。2点めは、人出の多さ。北海道は車社会という印象を持っていたのですが、東京並みに人がたくさん街を歩いています。札幌駅から大きな地下街が広がっているのですが、そこにも地上と同じくらい人出がありました。3点めは、お店の元気さ。中心市街地には空き店舗がほとんどなく、人出の多さに呼応して、いずれのお店も活気があります。4点めは、外国人観光客の多さ。アジア系の方が多いので、一見分からないのですが、すれ違う際に聞こえてくる言葉でそれと気づきます。5点めは、新千歳空港の華やかさ。広大なスペースに2階はショップ、3階は飲食店、4階はアミューズメント施設がひしめき合い、4階には温泉まであり、一日いても飽きずに楽しめる充実ぶりで、いずれの店も大勢の客で賑わっていました。なお、個人的に一番印象深かったスポットは、大きなアーケード街狸小路です。人通りの少ない群馬のアーケード街を見慣れているので、その賑わいぶりに目を見張りました。アーケード街の端のほうに行くと、途端に昭和レトロのテイストが漂い出すのも面白かったです。

 さて、今回は、藤岡市を訪れ、西平井・金井地区を散策しましょう。県道173号(金井倉賀野停車場線)沿いにある西平井公会堂に自動車を停め、歩き始めます。すぐ南に、西平井公民館があります。古い公民館建築によくある様式の、木造平屋建ての横長の建物ですが、現在ではこの手の建築はだいぶ少なくなってきているので、なかなか貴重な存在です。道の向かい側には、西平井自警団詰所と看板が掲げられた古い小さな建物と、銀色に塗られた火の見櫓があり、この周辺には、とても懐かしい風景が今も残っています。県道173号を南に向かって歩を進めると、やがて右側に常光寺が現れます。元亨3年(1323)に原常光が開基、観光普門和尚が開山し、関東管領山内上杉顕定の菩提寺となっています。天文20年(1551)平井城落城の際に焼失しましたが、その後再建されました。県道173号の反対側には、清見寺があります。天正9年(1581)に山内上杉憲政の家臣藤原継行が開基した寺で、現在の本堂は明治22年に再建されたものです。天正18年(1590)に片山新十郎久隆が寄進した涅槃釈迦像は、市指定重要文化財となっています。江戸時代に折衷学を開いた儒学者片山兼山はこの近くの生まれで、境内には分骨された墓があります。

 引き続き、県道173号を南に向かって進みます。道の左右には古い農家建築や土蔵などが点在していて、味わいのある道です。やがて左側に緑色の小さな丘陵が現れます。ここは旧平井城址で、土塁や内堀、橋が復元されて、関東管領平井城址公園として整備されています。平井城は、永享10年(1438)頃に関東管領山内上杉憲実の命により長尾忠房が築城したと推定されています。天文21年(1552)に北条氏康により落城、永禄3年(1560)長尾影虎により廃城とされました。なお、背後の山には詰城である平井金山城址があり、いずれも県指定史跡となっています。復元土塁の上をはじめ、周囲にはたくさんの幟がはためき、案内板も多数設置されていて、地域住民の平井城顕彰への思いの強さが伝わってきます。再び県道173号を南に向かって進むと、右側に稲荷神社が現れます。傾斜地を利用して、社殿は石段を登った上にあります。金井の旧村社で、享禄年間関東管領上杉氏によって平井笹曲輪城の守護神として創建されました。引き続き県道173号を少し南へと歩を進め、右折した奥のほうに、千体仏地蔵堂があります。現在祀られているのは740体で、江戸時代に作られ、大半は桧を素材とした30センチほどの地蔵像です。隣には、薬師尊を祀った簡素なお堂があります。県道173号をさらに南に向かうと、T字路にぶつかるので右折して、県道175号(上日野藤岡線)を南西に進みます。金井郵便局を通り越して間もなく、右側に細い道が現れるので、右折すると、雑木と竹の混在する林に参道があり、石段を登ると八坂神社が現れます。

平井城址

 来た道をしばらく戻り、稲荷神社の先にある急坂を登り、直進すると、やがて左側に三嶋神社上ノ宮があります。この神社は、上杉顕定が伊豆三嶋大社から分祀し、平井城の氏神として祀りました。長い参道の先に社殿があるのですが、戸を閉ざした拝殿はまるで塀のように横長に広がっていて、個性的な姿をしています。三嶋神社上ノ宮の北側には、仙蔵寺があります。文応元年(1260)法印親玄の創建で、応永3年(1396)山内上杉憲実が中興開基しました。境内には平井城三石(亀石、虎石、蝸牛石)のうち、蝸牛石があります。蝸牛はかたつむりのことですが、「だいろいし」と読みます。また、狩野派創始者である狩野正信による文殊獅子手持経巻図を所蔵しています。農地の中の静かな道をしばらく北に進みます。県道41号(神田吉井停車場線)を横切り、さらに北に歩を進めると、やがて三嶋神社下ノ宮のこんもりとした鎮守の森が見えてきます。三嶋神社は、上ノ宮(別殿)と下ノ宮(本社)で対になっており、「三嶋様の夜祭り」が古くから伝承されています。この夜祭りは、秋季大祭の前夜祭として、毎年11月14日に行われ、午前10時頃、御神体を神輿に移し、下ノ宮から上ノ宮へと渡御を開始し、上ノ宮に12時頃到着します。午後9時半頃、今度は上ノ宮から下ノ宮へと渡御を行い、午後10時半頃に下ノ宮へ到着します。古来からの祭りの形態を現在まで残しているのは珍しく、秩父の妙見様と並んで、関東地方を代表する夜祭りです。水の張られた田んぼを眺めながら東へ向かい、県道173号を南に下り、西平井公会堂まで戻りました。

三嶋神社下ノ宮

文/企画課 新井基之

●今回ご紹介したコース