群馬県信用保証協会

海老瀬地区の道

折々の散歩道

多様な歴史を持つ農村を静かに歩む

板倉町

 今冬は山間部で雪不足が続いていましたが、1月に入ると県内全域で2度にわたり積雪があり、平野部においても交通マヒや怪我、農作物への被害等が発生しました。2年前の記録的な大雪に比べると、行政、市民ともに雪への備えが進んでいたこともあり、復旧はスムーズだったと思います。最近は大雪だけでなく大雨や高気温など異常気象が頻発していますので、さまざまな事態を想定した備えが、一層重要になってきます。
さて、今回は、板倉町を訪れ、海老瀬地区を散策することにしましょう。わたらせ自然館の駐車場に車を停めて、歩き始めます。わたらせ自然館は、大谷石造りの大きな米蔵を改装したもので、風格のある美しい建物です。わたらせ遊水地に関する展示のほか、昆虫標本が充実しており、企画展示コーナーもあります。道の向かい側の板倉レンタサイクルセンターの奥には、非常に存在感のある古い給水塔らしきものが建っています。北に向かって歩き始めると、信号を渡った右側の高台に建つ第9区公民館の敷地内に、薬師堂や、町指定天然記念物になっている、シダレザクラとカヤ、ふたつの巨木があります。シダレザクラは、樹齢200年余り、樹高16メートル、目通り2.53メートルの立派なもので、開花期にはライトアップされます。第9区公民館のすぐ北側には、閉園となった保育園の建物を活用した板倉町文化財資料館があります。再び北に向かうと、右側に長良神社が現れます。創建時期は不詳ですが、本郷地区の鎮守として祀られ、現在の社殿は昭和47年に建て直されたものです。道の向かい側には松安寺があります。元久元年(1204)に創建され、明治35年には足尾鉱毒被害者救済第一施療所が置かれました。

 農地と住宅が混在する道を、賀茂神社を目指して進みます。賀茂神社は、創建時期は不詳ですが、京都の賀茂神社を分祀したものです。かつての北海老瀬村の総鎮守で、現在の社殿は明治35年竣工のものです。町指定重要無形民俗文化財である祭礼当番引継ぎ式が伝わっています。境内の端には、大杉神社があり、弘法大師が諸国行脚の際に杖として使っていた木を挿したところ、大きく育ったと伝えられる杉が生えていましたが、平成26年9月に道路整備のため伐採されました。案内板には伐採される前の写真が掲示されています。西のほうへ向かい、東武日光線を超えたところに、寺西貝塚があります。1〜3メートルの小規模の貝塚(地点貝塚といいます)が複数集まっていて、今から7000〜8000年前のものです。昭和21年、昭和38年、昭和61年に発掘調査が行われ、ヤマトシジミをはじめ、マガキ、ハイガイなどが見つかっています。海老瀬台地上にあるほかの貝塚とともに、海老瀬貝塚群と呼ばれています。縄文時代前期には、東京湾の海岸線がこの辺にあったことが分かります。

 東へとしばらく進み、県道9号(佐野古河線)にぶつかると、並行して走る歩行者専用道路を南へと歩を進めます。県道9号は、渡良瀬遊水地の堤防のような形で南北に走っていて、東の眼下に遊水地を見下ろすことができます。県道9号の下をトンネル状にくぐる海老瀬排水樋管、板倉排水樋管を通り越し、町民グランドを越えたあたりで、谷中湖(渡良瀬貯水池)が見えてくるので、左折をして、湖に向かって歩を進めます。谷田川に架かる想い出橋を渡ると、湖岸に出ます。渡良瀬遊水地の歴史をひも解きますと、かつてここには谷中村がありました。明治10年に古河市兵衛が足尾銅山の経営に乗り出してから、渡良瀬川に鉱毒が流れ出し、下流域一帯に甚大な被害が発生しました。この足尾鉱毒事件は、日本初の公害事件と言われ、国会議員田中正造が反公害活動に取り組んだことで知られています。板倉町の農民たちも公害により大きな被害を受け、近隣の村々とともに、館林市の雲竜寺を拠点に押出し(集団示威請願行動)を繰り返し、6回目の押出しで川俣事件に発展した様子が、前述の板倉町文化財資料館で知ることができます。明治38年、国は公害を防ぐために、谷中村全域を強制買収し鉱毒の沈殿池を作る計画を立て、その後数年にわたり工事を行い、現在の渡良瀬遊水地の基礎ができました。その後、紆余曲折を経ましたが、広大な芦原の湿地帯が手付かずのままの状態で残されていることが評価され、平成24年にラムサール条約湿地に登録されました。谷中湖は、現在ウォータースポーツのメッカになるなど、多くの人々に親しまれています。

谷中湖

 しばらく湖畔の道を南に向かって進みます。冬の日射しが湖面で輝き、水鳥たちが羽根を休め、まことに麗らかな風景です。冬ばかりでなく、四季折々、さまざまな魅力があることでしょう。やがて湖畔から離れ、谷田川に架かるまごころ橋を渡り切ったところで埼玉県北川辺町に入り、県道9号に出て、道の駅きたかわべで遅いお昼ご飯を食べました。県道9号の西側を県道に沿うように北に向かう道を進み、谷田川を渡る際に板倉町海老瀬に入ります。更に進むと、邑楽東部第二排水機場の大きな建物が現れるので、手前を左折して西に向かうと、住宅地の中に、一峯神社が現れます。一峯神社は、天平宝宇8年(764)、日光開山の勝道上人が二荒権現を勧請し峯権現社として創建したと伝えられています。背後に広がる平地林は、社叢として町指定天然記念物となっており、境内には一峯貝塚があります。文政3年(1820)作の狛犬もなかなか味わい深い姿で佇んでいます。西に向かって少し進むと、釣堀として利用されている権現沼が現れます。平日だったのですが、多くの釣り人たちで賑わっています。沼の北側には離山公園が広がっていて、敷地内に、数箇所に点在して離山貝塚があります。近辺は、桜の名所で、彼岸花の群生地としても知られています。北に向かって進むと、やがて大杉神社が現れます。創建時期は不詳ですが、町指定重要無形文化財のお囃子が伝わっています。大谷石造りの農協の倉庫を眺めれば、似たような造りのわたらせ自然館はもうすぐです。

一峯神社

文/企画課 新井基之

●今回ご紹介したコース