群馬県信用保証協会

大柏木地区の道

折々の散歩道

早春ののどかな農山村をのんびり歩く

東吾妻町

 先日、富岡市で働いている知り合いに、地元住民ならではの情報に基づくお勧め散策コースをアレンジしてもらい、総勢10名で日帰りツアーをしてきました。平成26年6月に世界文化遺産登録された富岡製糸場には、登録前に数回足を運んだことがあり、登録直後にも訪れ、まちの変化もその都度見てきましたが、どうしても表面的な観光・散策になりがちですので、もう少し深くまちを知りたいと思ったことによります。最初に、もみじ平総合公園の駐車場に集合し、車に乗り合わせて出発しました。まずは上高尾地区で昨年夏に開業したカレー屋baimaiで、早めのお昼ご飯を食べました。移動販売で数年間営業していた頃から、その味のファンになっていたのですが、実店舗を構えてからも、大満足の美味さです。その後、車で下黒岩にある「つばめベーグル」でベーグルをお土産に買い、上州富岡駅近くの大駐車場に車を停め、街なかを散策します。富岡駅の駅舎は、平成26年に新築され、日本建築学会賞やグッドデザイン賞などを受賞した、煉瓦を多用したモダンなものです。近くのおかって市場で地元産のお土産を買い、「あんことCAFÉ」でコーヒーを飲みながらひと休みしてから、富岡製糸場の正門を経由して、街なかをぐるりと回って駐車場まで戻りました。製糸場周辺には、世界遺産登録直後に訪れたときと比べ、土産物店や飲食業が増えて、観光地らしい活気に満ちていました。しかし、今回のツアーは、世界遺産の流れとは違った角度で、地元の方々に愛されているお店を回ることができて、とても意義深く楽しいものでした。ほかの人に頼めば、また違ったコースを案内してもらえることでしょう。まちのリピーターを増やすには、このようにまちの別の側面を見てもらえるコースを用意することも、大切なことだと思いました。

 さて、今回は、東吾妻町を訪れ、早春の大柏木地区を散策しましょう。高崎方面から国道406号(草津街道)を車で北西に向かい、大戸の信号を左折すると、やがて右に折れる県道377号が現れるので、そちらに進みます。間もなく下中住民センターと書かれた案内板が見えてくるので、そこに駐車をして、歩き始めます。車で通ってきた道を戻ると、少し奥まったところに、佐奈神社があります。この神社は、吾妻七社のひとつで、周囲は杉林に覆われ、赤い鳥居の前に立つ杉は、とりわけ大きく見事です。境内の端にある、古びて壊れた滑り台が、もの悲しくも郷愁を誘います。県道377号を西に向かい、右に逸れる道へと歩を進めると、のどかな農山村風景が広がります。土蔵がたくさん残っていて、白壁のものや、土がむき出しになった壁のものが、混在しています。

 やがて、大柏木諏訪神社が現れます。まず、参道の石段の両側に立ち並ぶ8本の杉並木の大きさに圧倒されます。この杉並木は、町指定天然記念物になっています。周囲は杉林で囲まれていますが、境内は広く明るく、社殿と神楽殿が仲良く並び、渡り廊下でつながっています。この神社はかつて大柏木村の鎮守で、建久3年(1192)源頼朝が三原野の狩の際に勧請したという言い伝えがあります。社殿の右奥にはご神木である杉の巨木が立っていて、参道の杉並木より一回り大きく、環境庁「日本の巨樹・巨木林 関東版(T)」によると、樹齢300年以上、樹高24メートル、目通り幹囲は5.4メートルです。神社の入口付近には、「注意 イノシシのワナあり」と書かれた案内板が立っており、その奥の野原には檻が見えます。神社の東に広がる丘陵地には、かつて羽田城がありました。この地域を治めた羽田彦太郎によって築城されましたが、築城時期は不明です。永禄5年(1562)、武田信玄の侵攻により羽田氏が追われ、浦野重成へと城主が変わりました。廃城の時期も不明で、建造物は残っていませんが、土塁や堀切の跡はよく確認できるようです。余り整備されていないようなので、城址の散策はやめておきました。

大柏木諏訪神社

 引き続き、西へ向かって静かな道を進むと、右側に大柏木公民館が現れます。かつての大柏木小学校だったところで、広い敷地内に、新しい公民館の建物と、大柏木小学校跡と刻まれた碑が立っています。いったん県道377号に出て、すぐに右折して三福寺に向かいます。この寺は宝暦12年(1762)に創建され、同じ時期に植えられたしだれ桜が現在も残っています。幹は切り落とされ、うろが走り、コンクリートの柱で支えられているなど、満身創痍の姿ですが、古老のような威厳と風格があり、花の時期にどのような様子になるのか、見てみたいと思いました。散策に訪れたのは3月中旬だったのですが、本号が発行される4月中旬には、きっと見頃になっていることでしょう。桜には早い時期でしたが、梅は散策途中の至るところで咲いていて、春の訪れを予感できます。寺の西側を北へと向かう急坂を登ると、古い農家建築がぽつりぽつりと立っています。沢に架かる天神橋の手前、民家の横を北へ少し入ると、小さい社と並んで、天神道祖神があります。天神橋を渡るとすぐに、路傍に天神大黒天などの石造物が佇んでいます。

 今川へと流れ込む沢に沿う道を南へと下り、県道377号に出ると、ひたすら東へと進みます。今川と県道377号は、近づいたり離れたりしながら西から東へと走り、その間には田んぼが広がり、川の向こうには山並みが続いています。やがて路傍に、芭蕉句碑がぽつんと立っているのが目に入ります。「梅が香に のっと日の出る 山路哉」と刻まれています。ちょうど梅の咲き誇る時期だったため、句が近しいものに思えます。日の出の様子を「のっと」と表現するところに、芭蕉ならではの俳味を感じます。そのすぐ先には、小高い丘陵の上に、赤い鳥居が立っています。石段を登り赤い鳥居をくぐると、畑の中にまっすぐ一本の道が続き、その先に、先ほど立ち寄った大柏木諏訪神社の、赤い鳥居がかすかに見え、ここは諏訪神社の参道入口であることが分かります。県道377号をのんびり歩きながら、下中住民センターまで戻りました。

晩冬の田んぼ

文/保証統括部 新井基之

●今回ご紹介したコース