事業承継支援の取組事例

事例1【外部専門家派遣事業による経営改善支援、事業承継支援】

企業の業種:食堂受託管理業
年商:約5億円
従業員:120名

1.事業承継支援前の企業の状況

 支援企業は業歴約30 年の食堂受託業者です。過去に事業の多角化を目指して設立した関連会社へ多額な貸付金を抱える中、売上の拡大を目指して事業を展開した結果、不採算受注などの要因から収益性が悪化し、債務超過に陥っていました。また、設備投資を手持ち資金で手当てしていたため、資金繰りが忙しく、既存の借入については返済軽減などの金融支援を受けていました。

2.事業承継支援のきっかけ

 メインバンク主導のもと経営改善への取り組みを進め、ここ数年は毎期利益計上し、債務超過は解消されつつありましたが、メインバンクから当協会へ専門家による経営改善に関するアドバイスが欲しいとの要望が寄せられました。
 そこで、当協会は、専門家による経営改善計画書作成支援を実施しました。経営改善計画書の作成には、社長の息子である専務が主体となって取り組みました。当協会の担当者はこの様子を見て、「支援企業のもう一つの課題として、事業承継がある」ことに気づき、思い切って事業承継に係る外部専門家派遣事業を支援企業に提案しました。

3.事業承継支援の内容

 当時、社長の年齢は67歳、専務の年齢は41歳でした。社長は専務に経営を任せることを考えていましたが、何をどのように進めればよいか分からず不安を抱えていたため、提案を受け入れてくれました。そこで当協会は、事業承継に造詣の深い中小企業診断士に事業承継支援を依頼し、事業承継のためのロードマップ等の事業承継計画書作成支援に、共に取り組むこととしました。
 今回は、既に後継者が決定している「親族内承継」であることから、「事業承継とは」「事業承継の進め方」「事業承継の基本方針」「事業承継計画書の作成」について、中小企業診断士より説明がありました。事業をスムーズに承継するには5年から10 年程度の期間を設けて進めていくものです。その過程で〔人の承継〕〔資産の承継〕〔経営資源の承継〕をそれぞれ整理、顕在化して、計画的に実行していく必要があります。

4.事業承継支援の結果

 今回の一連の支援は、経営改善計画の「磨き上げ」に始まり、後継者が積極的に経営改善計画に参画し、そこから事業承継につながった事例です。
 社長の思いを専務に伝え、専務は事業の継続と発展に向けて取り組んでいくために、必要な項目や考え方について専門家から学ぶことができました。
 当協会が経営改善支援に取り組む中で、社長、専務との信頼関係を築き、そのおかげで事業承継というデリケートな課題に対して、前向きに取り組む気持ちを持っていただくことができました。今後も当協会は、県内中小企業の輝く価値を、未来に繋げます。

事例2【経営承継準備関連保証・経営承継関連保証を活用した第三者承継支援】

承継企業:A 社 木造建築工事 年商:1.7億円 従業員:4名
後継企業:B 社 木造建築工事 年商:7.4億円 従業員:10名

1.事業承継支援前の企業の状況

 支援企業A 社は業歴120 年の老舗建築業者です。寺院の改修工事を手掛けるなど、木造建築工事・設計・施工において、他社にはない経験、実績、技術力があります。代表者は5代目として長年、建築・設計に携わってきましたが、70歳を過ぎたころから、事業承継について考えるようになり、群馬県事業承継・引継ぎ支援センターに登録するなど、行動を始めていました。
 一方、A 社と同業のB 社は、受注の幅を広げるため、自社にない技術を持つ他社を買い取ることを希望しており、金融機関にM&Aの相談をしていました。

2.事業承継支援のきっかけ

 相談を受けた金融機関は、A 社とB 社の希望がマッチしたため、両者の橋渡しに取り組みましたが、A 社には「A 社が代表者名義である事業用資産を買取する資金」、B 社には「A 社の株式を買取する資金」が、それぞれ必要となることが分かりました。
 今回のケースでは、借入人や資金使途が複雑なケースであったため、他の事業承継支援機関ではなく、事業承継相談窓口があり、資金調達支援に長ける当協会までご相談をいただきました。

3.事業承継支援の内容

 当協会は、双方の企業を訪問し、事業承継に至った経緯や、事業承継後の事業構想等についてヒアリングを行いました。A 社、B 社ともに、家づくりに対する考え方が同じ方向であったことや、社長の人柄が最終的な決め手となったそうです。
 また、A 社、B 社の資金の必要理由に合致する保証制度を提案するため、両者の株主構成や所有不動産について確認を行い、それぞれ異なる事業承継の保証制度を提案しました。

4.事業承継支援の結果

 その後、金融機関を通じ保証依頼書が提出され、保証承諾に至りました。A 社の社長は「B社は当社にない宣伝・営業力を持っていることから、今後の相乗効果に期待している」と話し、B 社の社長は「A 社が持つ高い技術力を活かし、リノベーション事業の展開をしていきたい」と話をされていました。
 当協会の信用保証により、事業承継に必要な資金調達をスムーズに行うことができ、円滑な事業承継が実現しました。これからも事業承継を完了したお客さまを応援していきたいと思います。

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