経営改善支援の取組事例

事例1【当協会と金融機関が連携して経営改善計画を作成】

企業の業種:野菜漬物製造業
年商:約8千万円
従業員:25名

1.経営改善支援までの経緯

 一般的に、漬物製造業は製造原価に占める原材料の比率が高く、天候に左右されたり、価格変動が大きいなど、原材料が収益に及ぼす影響が大きい業種です。需要については漬物が日本人の伝統的嗜好品であることから比較的安定しているといえますが、消費者の嗜好の変化、核家族化などの環境変化に対して、新製品開発、自社ブランド化により差別化を図ることが大切であるといわれています。
 こうした中、支援企業は全社一丸となって事業に取り組んでいるものの、目立った看板商品がなく、組織管理体制も不十分であることなどから、5年前には1億5千万円程度あった売上が年々減少し、直近では8千万円程度にまで落ち込んでいました。このため、本業での利益が確保できず、現状の経営状態、経営上の課題点及び改善の方向性が定まらないまま、事業を継続していることが今後の改善点でした。
 会社として危機意識は持っていたものの、どのように対応すれば良いか悩んでいたところ、タイミングよく金融機関からアプローチがあったため、金融機関と当協会との連携による経営改善支援を受けることにしました。

2.経営改善支援前の企業の状況

 支援企業は、日々の仕事に追われる中で、「誰に何を売るか」というコンセプトが明確ではありませんでした。「具体的に何をどうすればよいのか」という迷いや「どうせうまくいかないのではないか」という不安感もあり、社内で具体的な改善案作成に向けた話し合いを設ける機会はありませんでした。また、事務所及び工場内には、整理・整頓が行き届いていない箇所もありました。

3.経営改善支援の内容

 当協会の経営支援チームが、金融機関とともに支援企業のもとを訪れ、支援企業が現在置かれている状況や課題を再認識するための目線合わせを行いながら、具体的な経営改善計画書の作成支援を始めました。
 経営改善計画書は、財務・資金繰りに係る計画値のほか、「誰に何を売るか」というコンセプトを明確にした経営戦略計画についても盛り込みました。

4.経営改善支援の結果

 経営改善計画書作成完了後、支援企業はアクションプランに係る責任者を定め、改善に向けた取り組みを開始しました。また、事務所及び工場内の整理・整頓も自発的に実施されました。
 関係機関で、支援企業の将来あるべき姿を話し合い、それに向けて実現可能な計画を作成したことで、従来から実質的経営者として経営に参画していた後継者の方も、これまで関心の薄かった経営指標に関心が及ぶようになったことが印象深く残っています。

事例2【経営サポート会議に基づく、専門家派遣とリスケジュール対応】

企業の業種:通所・短期入所介護事業
年商:約5千万円
従業員:19名

1.経営改善支援までの経緯

 支援企業は、地域内における介護施設の過当競争により、十分な収益をあげることができず経営に悩んでいました。また、増収を見込んで実施した設備投資の負担が重く、資金繰りに窮していたことから、メインバンクと当協会の連携による現地調査を実施しました。
 社長、メインバンク、当協会で方針の協議を行った結果、当協会が事務局を務める経営サポート会議を開催し、専門家派遣による経営改善計画書の作成と、計画作成までのリスケジュール(返済額の軽減)を実施することが決まりました。

2.経営改善支援前の企業の状況

 支援企業の社長が計数観念に強く、介護業界における豊富な知識と経験をお持ちであったことから、自身で考えた改善策を試みましたが、期待する効果が得られずにいました。
 支援企業は施設利用者への丁寧な対応から顧客満足度が高い反面、介護スタッフが多く、業容に対し人件費の負担が重い状況にありました。社長自身も介護スタッフと同様のシフト勤務をしていたことから、マネジメントや外部への営業に十分な時間を確保できずにいました。

3.経営改善支援の内容

 まず、経営サポート会議の場で、支援方針である専門家派遣による経営改善計画の作成について報告し、各取引金融機関の目線合わせを行ったうえで、各取引金融機関にリスケジュール支援を依頼しました。
 無事にリスケジュール支援に同意を得ることができ、計画作成まで資金繰りの見通しがついたことから、群馬県産業支援機構に専門家派遣を依頼しました。専門家については、社長自身が介護業界に精通していることから、同業界の専門家ではなくサービス業の経営指導に実績のある専門家を派遣することが決定しました。専門家による企業訪問は合計4回実施され、営業面の改善策、人材管理の改善策について指導がありました。また、SWOT分析や具体的改善施策の抽出、アクションプランの作成を行いました。できあがったアクションプランを基に、メインバンク指導による数値計画を作成し、経営改善計画書が完成しました。

4.経営改善支援の結果

 完成後、再度経営サポート会議を開催し、社長から各取引金融機関に計画内容の報告及び計画期間内の再リスケジュール支援についての依頼を行い、同意する旨の回答をいただきました。その後、各取引金融機関によるリスケジュール支援の実行により、当面の資金繰りについて懸念がなくなり、社長はマネジメントに専念できるようになりました。
 スキーム終了後、支援企業は経営改善計画書に基づく具体的な経営改善策(アクションプラン)の実行に移りました。組織体制の再構築により、外部への営業攻勢が図れるようになり、また、人材管理の改善策に取り組むことで、人件費、人材育成等の内部管理体制を強化することができました。

事例3【経営改善サポート保証による借入金集約】

企業の業種:ラーメン用スープ製造販売業
年商:約1億1千万円
従業員:9名

1.経営改善支援までの経緯

 支援企業は、ラーメン用のスープの製造・卸売を行っている企業です。スープの味は評判がよく、増収増益を図るためスープ製造用の釜を新規借入により購入しました。しかし直後に東日本大震災の被害に遭った取引先が倒産してしまい、想定していた増収が見込めず、設備資金の負担だけが残りました。やむなく金融機関に返済の軽減(リスケジュール)を依頼していました。

2.経営改善支援前の企業の状況

 そのようななか、全国に幅広く展開しているラーメンチェーン店運営会社との取引を獲得したことで、設備投資に見合った売上が期待できるようになりました。メインバンクが主導となり、今後の収支予想の作成を専門家に依頼し、経営改善計画書の作成を開始しました。予想収益によれば、3年後には債務超過の解消も見込まれるようになりました。しかし、既に返済額の軽減をしていることから、今後売上拡大による増加運転資金や、新たな設備資金の需要が発生した際に、新たな借入を行うことが難しい状況でした。また、借入口数が多く、従来の約定弁済額に戻せるほどの返済財源の確保も厳しい状況でした。
 そこで当協会は、メインバンクの協力を得て、返済軽減している複数の保証付借入を集約し、借入の正常化を図るべく経営改善サポート保証の利用を提案しました。

3.経営改善支援の内容

 経営改善サポート保証は、対象となる事業計画書に対し、債権者の合意を得ることができれば、大幅なリファイナンス効果が期待できる保証制度です。従来の保証制度は、地方公共団体の制度を利用している場合は各々の制度資金毎に借り換える必要があり、借入口数の集約は困難でしたが、経営改善サポート保証は、地方公共団体制度融資を含むすべての借入を借換の対象としており、大幅な借入口数の集約を行うことができます。
 支援企業の経営改善に寄与するべく、作成された経営改善計画書に、借入口数の集約及び返済負担抑制のため、経営改善サポート保証を利用する旨を盛り込み、当協会が事務局を務める取引金融機関を一堂に会した経営サポート会議において、計画の発表・合意形成を行うことができました。

4.経営改善支援の結果

 経営改善サポート保証による保証付借入の借換集約を行い、返済負担を増やすことなく借入を正常化することができました。これにより今後の資金調達の可能性も高まり、増収増益に向けた体制をつくることができました。

事例4【返済緩和先への経営改善支援で金融取引を正常化】

企業の業種:道路舗装工事業
年商:約2億7千万円
従業員:18名

1.経営改善支援までの経緯

 支援企業は、先代社長が創業し、約50年の業歴をお持ちの企業です。不動産市場が活況の時期に本社土地建物を借入金で購入しましたが、その後の受注減少により借入負担が重くのしかかる状況に陥ってしまいました。しかし、支援企業は道路工事における特殊工事技術を持っており、大手建設業者を取引先に確保していました。そうした背景もあり、金融機関からは、借入金の返済軽減による側面的な支援を受けていました。
 そのような中、6年前に創業社長が急逝し、当時の後継者である息子さんは33歳の若さで社長に就任することとなり、収益の好転と借入金圧縮に向けて経営改善に取り組んでいました。

2.経営改善支援前の企業の状況

 取り組みが徐々に奏功し、経営改善の兆しが見えてきたところではありましたが、設備が老朽化していることによる工事精度の低下や、納期の順守等に懸念が生じており、設備更新は事業継続上の課題となっていました。そこで、メインバンクを介して、当協会の外部専門家派遣事業による経営改善支援を活用して、経営改善計画書を作成し金融取引の正常化を図りたいとの相談を受けました。

3.経営改善支援の内容

 当協会では、メインバンクの支援姿勢を確認し、更に経営者へのヒアリングを通して、外部専門家派遣事業を実施することになりました。担当する中小企業診断士は2名で、1名は建設業分野、もう1名は金融支援分野を得意とし、合計8回の派遣の中で、ヒアリング・診断・経営改善計画書作成が実施されました。なお、経営改善計画書の内容は、以下の三本柱を主体に構成されました。
(a)財務基盤の強化
 ・「受注」⇒「施工」⇒「利益」がしっかり見える財務管理を行うこと。
 ・計画達成に向けたチェック機能を働かせること。
(b)金融支援:既存借入の借換集約による返済正常化への取り組み。
(c)設備の更新:事業継続において無理のない計画を立てること。

4.経営改善支援の結果

 経営改善計画書には、保証付き融資8本を2本に借換集約することに加えて、複数ある少額債権を有する金融機関の借入を自己資金で一旦返済して、不足分をメインバンクがプロパーで支援する内容が盛り込まれました。これらを実施することで既存の借入金返済の正常化が図られました。
 経営改善計画書には設備の更新も盛り込まれていたことから、経営改善の道のりは始まったばかりでしたが、全社一丸となって取り組む姿を見て、今後の活躍に期待したいと思いました。

 

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