経営支援の取り組み事例

事例1【当協会と金融機関が連携して経営改善計画を策定】

企業の業種:野菜漬物製造業
年商:約8千万円
従業員:25名

1.経営支援までの経緯

 当該企業は、相応の業歴を有する野菜漬物製造業者です。一般に漬物製造業は製造原価に占める原材料の比率が高く、天候に左右されたり価格変動が大きいなど、原材料が収益に及ぼす影響が大きい業種です。需要については漬物が日本人の伝統的嗜好品であることから比較的安定しているといえますが、消費者の嗜好の変化、核家族化などの環境変化に対して、新製品開発、自社ブランドにより差別化を図ることが大切であるといわれております。

 こうした中で、当該企業は、全社一丸となって事業に取り組んでいるものの、目立った看板商品もなく、組織管理体制も不十分であることなどから、5年前には1億5千万円程度あった売上は毎期前年比15%程度減少し、直近では8千万円程度にまで落ち込んでいました。このため、本業での利益が確保できず、また現状の経営状態、経営上の問題点及び改善の方向性が定まらないまま、事業継続していることが問題点でした。

 会社として危機意識は有していたものの、どのように対応すれば良いか悩んでいたところ、タイミングよく金融機関からアプローチがあり、金融機関と当協会との連携による経営支援を受けることにしました。

2.経営支援前の企業の状況

 当該企業は、売上が毎期減少していることから、現状を打開しなければならないという意識は強かったのですが、日々の仕事に追われる中で、「誰に何を売るか」というコンセプトが明確ではありませんでした。「具体的に何をどうすればよいのか」という迷いや「どうせうまくいかないのではないか」という不安感もあり、社内で具体的な改善案策定に向けた話し合いを設ける機会はありませんでした。また、事務所及び工場内には、整理・整頓が行き届いていない箇所もありました。

3.経営改善計画の策定

 当協会の経営支援チーム2名が、金融機関1名とともに、当該企業と合計5回の面談を実施しました。当該企業が現在置かれている状況や問題点を再認識し、具体的な改善計画を策定し、責任者を定めて改善に向けた取り組みを開始しました。

 改善計画については、当該企業、金融機関及び当協会の三者で現状の問題点を認識し、将来のあるべき姿を話し合い、それに向けて実現可能な計画を策定しました。財務・資金繰りに係る計画のほか、「誰に何を売るか」というコンセプトを明確にした経営戦略についても策定しました。これらの取り組みの中で、従来から実質的経営者として経営に参画していた後継者も、これまで疎かった経営指標に関心が及ぶようになりました。

4.その後の状況やこれからの展望

 売上は回復基調にあり、事務所及び工場内の整理・整頓も自発的に実施されております。経営支援チームでは、定期的に企業訪問等を行い、経営状況及び改善策の実施状況を確認しながら、支援活動を継続していきます。

事例2【経営サポート会議に基づく、専門家派遣とリスケジュール対応】

企業の業種:通所・短期入所介護事業
年商:約5千万円
従業員:19名

1.経営支援までの経緯

 当該企業は事業地域内における介護施設の過当競争により、十分な収益をあげることができず経営に悩んでおりました。

 また、増収を見込んで実施した設備投資負担が重く、資金繰りに窮していたことから、メインバンクと当協会の連携による現地調査を実施しました。

 社長さん、メインバンク、当協会で方針の協議を行った結果、当協会が事務局を務める経営サポート会議を開催し、専門家派遣による経営改善計画策定と、計画策定までのリスケジュール(返済額の軽減)を実施することが決まりました。

2.経営支援前の企業の状況

 社長さんは計数観念に強く、介護業界における豊富な知識経験を有しており、自身で考えた改善施策を試みましたが、期待する効果が得られずにおりました。

 当該企業は施設利用者への丁寧な対応から顧客満足度が高い反面、介護スタッフが多く業容に対し人件費の負担が重い状況にありました。社長さん自身も介護スタッフと同様のシフト勤務をしており、マネジメントや外部への営業に十分な時間を確保できずにおりました。

3.経営支援への取り組み(専門家派遣による経営改善計画の策定)

 まず、経営サポート会議を開催し、各取引金融機関にリスケジュール支援を依頼しました。
そのうえで、“専門家派遣による経営改善計画の策定”について支援方針を報告し、各取引金融機関の目線合わせを行いました。

 リスケジュール支援に同意いただき、計画策定までの資金繰り見通しがついたことから、群馬県産業支援機構に専門家派遣を依頼しました。専門家については、社長さん自身が介護業界に精通していることから、同業界の専門家ではなくサービス業の経営指導に実績のある専門家を派遣することが決定しました。

 専門家による企業訪問は合計4回実施され、営業面の改善策、人材管理の改善策について指導いただき、SWOT分析や具体的改善施策の抽出、アクションプランの策定を行いました。できあがったアクションプランを基に、メインバンク指導による数値計画を作成し、経営改善計画書が完成しました。

 完成後、再度経営サポート会議を開催し、社長さんから各取引金融機関に計画内容の報告及び計画期間内の再リスケジュール支援についての依頼を行い、同意する旨の回答をいただきました。

4.その後の状況やこれからの展望

 各取引金融機関によるリスケジュール支援の実行により、当面の資金繰りについて懸念がなくなり、社長さんはマネジメントに専念できるようになりました。現在、当該企業は経営改善計画に基づく具体的な経営改善策を実行に移していますが、組織体制の再構築により、外部への営業攻勢が図れるようになりました。また、人材管理の改善策に取り組むことで、人件費、人材育成等の内部管理体制を強化することができました。

 当協会ではメインバンクと連携してモニタリング等を通して経営改善の実施状況を確認し、支援活動を継続していきます。

事例3【経営改善サポート保証による借入金集約】

企業の業種:ラーメン用スープ製造販売業
年商:約1億1千万円
従業員:9名

1.経営支援までの経緯

 当該企業は、ラーメン用のスープを製造・卸売をしています。スープの味は評判がよく、増収増益を図るためスープ製造用の釜を新規借入により購入しました。しかし直後に東日本大震災の被害に遭い取引先が倒産、想定していた増収が見込めず設備資金の負担だけが残りました。やむなく金融機関に返済の軽減(リスケジュール)を依頼していました。

2.経営支援前の企業の状況

 自社で経営努力し、全国に幅広く展開しているラーメンチェーン店運営会社との取引を獲得し、ようやく設備投資に見合った売上が期待できるようになりました。メインバンク主導で、今後の収支予想の作成を専門家に依頼し、経営改善計画書の作成を開始しました。予想収益によれば、3年後には債務超過の解消も見込まれるようになりました。しかし、既に返済額の軽減をしていることから、今後売上拡大による増加運転資金や、新たな設備資金の需要が発生した際に、新たな借入を行うことが難しい状況でした。また、借入口数が多く、従来の約定弁済額に戻せるほどの返済財源の確保も厳しい状況でした。

 そこで当協会は、メインバンクの協力を得て当該企業の返済軽減している複数の保証付借入を集約し、借入の正常化を図るべく「経営改善サポート保証」の利用を提案しました。

3.経営改善サポート保証の活用

 経営改善サポート保証とは、「事業の再生に必要な資金」を対象とした保証制度で、「経営サポート会議による全金融機関の同意」を要件としています。従来は、地方公共団体の制度を利用している場合は各々の制度資金毎に借り換える必要があり、借入口数の集約は困難でしたが、経営改善サポート保証は、地方公共団体制度融資を含むすべての借入を対象としており、大幅な借入口数の集約を行うことができます。

 当該企業の再生に寄与するべく作成された経営改善計画書に、借入口数の集約及び返済負担抑制のため、経営改善サポート保証を利用する旨を盛り込み、当協会が事務局を務める取引金融機関を一堂に会した経営サポート会議において、計画の発表・合意形成を行うことができました。

 経営改善サポート保証を活用し、保証付借入の借換集約により返済負担を大幅に増やすことなく借入を正常化することができました。これにより今後の資金調達の可能性も高まり、増収増益に向けた体制をつくることができました。

4.経営改善サポート保証の活用

 当協会では、メインバンクと連携しモニタリング等を通して経営改善の実施状況を確認し支援を継続していきます。

事例4【当協会の補助事業を利用して費用負担無く専門家を派遣】

企業の業種:キルティング加工業
年商:約3千万円
従業員:4名

1.経営支援までの経緯

 当該企業は、冬物衣料を中心にキルティング加工業を営んでいます。キルティング市場は、安価な海外生産に押されて国内市場が大きく縮小し、近隣で事業を継続しているのは当該企業を含めて数社となっています。また、受注が年々減少してきていることから、借入金の返済緩和を行っているような状況でした。

 当面の資金繰りと事業継続に不安を感じた社長さんは、当協会へアドバイスを求めてきました。この申し出を受けた経営支援担当者は、「信用保証協会中小企業・小規模事業者経営支援強化促進補助金」を活用した専門家による経営改善計画書作成を提案しました。当該補助事業は、金銭的な負担なく企業は計画書等の策定支援が受けられます。

2.経営支援への取り組み

 中小企業診断士協会の協力により、当該企業に最適な中小企業診断士を選出し、当協会の担当者とともに合計8回にわたる面談を行いました。

 現状分析が進むと、前年度の税金を分納せざるを得ないほど資金繰りが厳しい状況であることが判明しました。この改善のためには、受注が枯れる例年12月から4月の間の閑散期対策が課題だと判断しました。国内市場ではキルティングの需要増加は期待しにくいことから、他分野からの受注を確保する方向で検討に入りました。しかし、社長さんはキルティング以外の取引については消極的でした。

 社長さんが抱いている不安を取り除くために、群馬県産業支援機構(以下、「支援機構」という。)へ取引先のあっせんを依頼しました。すると間もなく、県外の商社から、当該企業のキルティング加工技術を見込んで、建築用シートの製造の打診がありました。建築用シートは冬場に需要があることから、当該企業の受注の平準化には願ってもない依頼であり、また、当該企業の縫製技術が十分発揮できるため、受注が決定しました。

3.その後の状況やこれからの展望

  本事例は、専門家である中小企業診断士、支援機構といった当協会の持つネットワークを活用したことと、当協会と業務提携をしている支援機構に直接支援・相談を持ちかけられたことが、大きな成果につながりました。

 今後とも当該企業へのモニタリングを通じて、業況を見守り続けたいと思っています。

事例5【返済緩和先への経営支援で金融取引を正常化】

企業の業種:道路舗装工事業
年商:約2億7千万円
従業員:18名

1.経営支援前の企業の状況

 当該企業は、現社長さんの先代が個人創業して約50年の業歴を有する地元でも知名度のある事業者です。不動産市場が活況の時期に本社土地建物を借入金で購入ましたが、その後の受注減少により借入負担が重くのしかかる状況に陥りました。

 しかし、当該企業は道路工事における特殊工事技術を持っており、大手建設業者を取引先に確保していました。そうした背景もあり、金融機関からは、借入金の返済軽減による側面的な支援を受けていました。

 そのような中、6年前に創業社長が急逝し、当時の後継者である息子さんは33歳の若さで社長に就任することとなり、収益の好転と借入金圧縮に向けて経営改善に取り組んでいました。

2.経営支援への取り組み

 こうした取り組みが徐々に奏功し、経営改善の兆しが見えてきたところではありましたが、設備老朽化による工事の精度や納期へ影響が出てくる懸念が生じており、設備更新は事業継続上の課題となっていました。

 そこで、メインバンクを介して、当協会の専門家派遣事業による経営支援を活用して、経営改善計画を策定し金融取引の正常化を図りたいとの相談を受けました。

3.専門家派遣による経営改善計画の策定

 当協会では、メインバンクの当該企業に対する支援姿勢を確認し、更に経営者へのヒアリングを通して、当協会の専門家派遣を実施することになりました。

 担当する中小企業診断士は2名で、1名は建設業分野、もう1名は金融支援分野を得意とし、8回の派遣でヒアリング、診断及び計画策定が実施されました。

 経営改善計画の内容は、以下の三本柱を主体に構成されました。

  (a)財務基盤の強化:
    ・「受注」⇒「施工」⇒「利益」がしっかり見える財務管理を行うこと。
    ・計画達成に向けたチェック機能を働かせること。
  (b)金融支援:既存借入の借換集約による返済正常化への取り組み。
  (c)設備の更新:事業継続において無理のない計画を立てること。

4.金融支援について

 保証付き融資8本を2本に借換集約することに加えて、複数ある少額債権を有する金融機関の借入を自己資金で一旦返済して、不足分をメインバンクがプロパーで支援する内容が盛り込まれました。これらを実施することで既存の借入金返済の正常化が図れました。

5.その後の状況やこれからの展望

 設備更新も盛り込まれた経営改善計画書の達成に向けて、現在、全社一丸となって取り組んでいます。

 受注状況は安定的に推移しており、財務基盤強化に向けた取り組みも着実に進捗し、計画策定後の直近決算も計画収支を上回る実績となっています。当協会はこれからもメインバンクと連携してモニタリングを続けていきます。

事例6【外部専門家派遣事業による経営支援、事業承継支援】

企業の業種:食堂受託管理業
年商:約5億円
従業員:120名

1.経営支援までの経緯

 当該企業は業歴約30年の食堂受託業者です。過去に事業の多角化を目指して設立した関連会社への多額な貸付金を抱える中、売上の拡大を目指し事業を展開した結果、不採算受注などから、収益性が悪化し債務超過に陥っていました。また、設備投資を手持ち資金で充当していたため、資金繰りが忙しく、既存の借入については返済軽減などの金融支援を受けていました。

2.経営支援から事業承継支援への取り組み

 メインバンクの指導のもと、経営改善への取り組みを進め、ここ数年は毎期利益計上し、債務超過は解消されつつありましたが、メインバンクから当協会へ、専門家による経営改善に関するアドバイスが欲しいとの要望が寄せられました。

 そこで、当協会は、専門家による経営改善計画策定支援を実施しました。経営改善計画の策定には社長さんの長男である専務さんが主体となって取り組みました。この様子から、当協会の担当者が当該企業のもう一つの課題として、「事業承継」があることに気づき、思い切って事業承継に係る専門家派遣を当該企業に提案しました。

3.事業承継支援への経緯

 社長さんの年齢は67歳で、専務さんは41歳。社長さんは専務さんへ経営を任せることを考えていましたが、何をどのように進めればよいか分からず不安を抱えていたため、提案を受け入れていただくことになりました。

 当協会は事業承継に造詣の深い中小企業診断士の先生に支援をお願いし、事業承継のためのロードマップ等の計画策定支援に取り組むこととしました。

4.事業承継支援の内容

 今回は、既に後継者が決定している「親族内承継」であることから、「事業承継とは」「事業承継の進め方」「事業承継の基本方針」「事業承継計画の作成」について、専門家より説明がありました。

 事業をスムーズに承継するには5年から10年程度の期間を設けて進めていく必要があり、その過程では〔人の承継〕〔資産の承継〕〔経営資源の承継〕をそれぞれ整理、顕在化して、計画的に実行していく必要があることも説いておられました。

5.活動結果とこれからの展望

 今回の一連の支援は、経営改善計画の「磨き上げ」に始まり、後継者が積極的に経営改善計画に参画し、そこから事業承継につながった事例です。

 社長さんの思いを専務さんに伝え、専務さんは事業継続と当該企業の発展に向けて取り組んでいくために必要な項目や考え方について専門家から指導を受けることができました。

 経営改善計画策定支援に同行した当協会の担当者と社長さん及び専務さんとの信頼関係が築けたことで、事業承継というデリケートな課題に対して前向きに取り組む姿勢が導き出せました。

 今後は、経営改善計画の進捗状況や事業承継に向けた取り組みについて、メインバンクと連携を図りながらモニタリングを行っていきます。

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